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中国の防空識別圏の設定は日本にとって大チャンス!?

世界2位の軍事予算を惜しみなく注ぎ込んで、陸海空で軍備を続々と拡充している不気味な隣人・中国。その軍事圧力に真正面から晒されながら、なんでもありの情報戦と大胆な心理戦に翻弄されっぱなしの我が日本。防空識別圏の設定はいかにも唐突に見えるが、果たして中国側の狙いはどこに!? SPA!は軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏の解説をもとに、日中の角逐の行方を追った。

⇒【前回】はコチラ http://nikkan-spa.jp/553096

◆防空識別圏の設定は日本にとって大チャンス!?

中国人民解放軍

中国にはトラウマとなった黄海上で行われた米韓合同軍事演習。写真:ロイター/アフロ

「ただ中国の領土要求に備えよ、と言われると日本人はすぐに軍事衝突に発想がワープしがちですが、その前に考えるべきことがあります。まず中国は、後ろにアメリカが控えている日本と正面から戦争して尖閣を奪おうと現時点で考えているわけではありません。本気で戦えば互いの国土が火の海になるだけの力を持っている中国と日本(在日米軍含む)は、“ケンカ”をするにはお互いに強すぎます」(黒井氏)

 中国は華々しい武力行使ではなく、静かにゆっくりとなし崩し的に侵入してくる。それが領土問題で勝利するための最も有効な手法だと彼らは知っているのだ。

「領土問題から戦争に発展するまでには、お互いが小さなジャブを打ち合う『平時のケンカ』状態が長く続きます。今回の防空識別圏発表は彼らのジャブの1つです。しかし、国際社会から強い反発を受けたことは、日本にとって決定的な大チャンスです。『東シナ海の公空で無法を行い我が国の領土奪取をも狙う中国に、日本は対応を余儀なくされた』と言って、実効支配を強化する絶好のタイミングなのです」

 日本政府は’78年の日中平和友好条約締結時に鄧小平が提唱した尖閣諸島領有権の「棚上げ」を愚直に守り続けてきた。お人好しすぎるこの無策状態からの転換を黒井氏は強く提唱する。

「竹島で韓国にやられたことを、日本は尖閣で実行すべき。海保の役人が調査名目で定期的に上陸し、徐々にその頻度を上げるようにする。同時に少しずつなんらかの施設を建設し、頃合いを見て首相もぜひとも上陸するべきですね。反日デモも活発になるでしょうが、尖閣を本気で守り通す気があるのなら、避けて通れない道です。万が一に備えた防衛体制強化も必要ですが、こうした中国の反発を見越した準備も大事なのです」

中国人民解放軍

メディアに公開された中国の国産戦闘機J10。その実力はF16に匹敵するとも。写真:ロイター/アフロ

◆防空識別圏と領土、領空、領海を混同してはいけない!!

 領土とその沿岸12海里(領海)、そしてそれらの上空(領空)を守ることは国防の第一義だ。だが、侵略の第一陣として飛来する敵の戦闘機や爆撃機は、領空侵犯からわずか30分ほどで領土上空へ到達してしまい、味方戦闘機の迎撃が間に合わない。

中国人民解放軍 そこで各国空軍では領空の外側に防空識別圏を設定し、このラインを越えて接近する航空機をレーダーで監視している。国籍や飛行目的が不明の場合には、戦闘機がスクランブル発進して目視での確認に向かうのだ。

 言うなれば、「領空侵犯」は自宅敷地に賊が入るようなもの。殴ったり(撃墜)、追い出したりして(針路妨害)も構わない。だが一方、「防空識別圏への侵入機」は自宅敷地外の公道に佇む不審者。警告(スクランブル)はいいのだが殴る(撃墜)のはダメなのだ。

【黒井文太郎氏】
’63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールドインテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。諜報、安全保障分野に詳しい。著書『インテリジェンスの極意!』

取材・文/SPA! 赤い中国取材班
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インテリジェンスの極意!

国の安全保障から企業インテリジェンス、公然情報の分析ノウハウまで、混沌の世紀を生き抜く技法・発想を、北岡元、佐藤優、大森義夫、太田文雄など20人のトッププロが伝授




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