【ディカプリオ インタビュー】金・女・権力…欲に溺れる男の生き様
ウルフ・オブ・ウォールストリート』は、そんなイメージを180度変える。金・酒、女にドラッグにと、とことん溺れる男が主人公のぶっ飛んだ作品(R18+指定)なのだ!
1980年代に26歳の若さで金もコネもなく野望だけで証券会社を設立し、法など無視して会社をどんどんデカくし、年収4900万ドル(およそ49億円!!)を稼ぎ出すも、人目をはばからない行動からFBIに睨まれ、36歳でウォール街を追放された実在の男ジョーダン・ベルフォートの伝記を基にしている本作。
本作をもっていったん、俳優を休業すると宣言しているディカプリオだが、このジョーダン役は彼自身が切望していたキャラクターだった。
「実は8年にわたってずっとやりたいと思ってきた話なんだ。人には欲深い部分や権力やお金に執着するところがある。それは現代でも変わっていない。だからこそ映画にしたいと思ったんだ。警鐘を鳴らすためにもね」
映画化にあたり、ディカプリオは誰に資金提供を頼むかも吟味した。ディカプリオが吟味? そう、彼は製作にも名を連ねているのである。
「とにかく時間をかけてやってきたプロジェクトだからね。どのフィルムメーカーたちと組むかも迷った。スタジオにはお願いしたくなかったんだ。何しろこういう作品だからね。とことん自由にやらせてもらいたかった。そういう意味で資金提供者に関しても時間をかけて選んだんだよ」
そして彼は名匠マーティン・スコセッシのもとへ話を持って行く。名匠とか言われても知らんし、という人のために補足すると、スコセッシ監督はかつてロバート・デ・ニーロの盟友といわれ、今ではディカプリオとのコンビでよく知られており、本作が5作目のタッグ。
『レイジングブル』『グッドフェローズ』などで、監督や脚色賞で9度にわたってアカデミー賞ノミネートを果たしている鉄人(今作の監督賞を含む)だ。受賞したのは『ディパーテッド』の1作のみだが、本作を観れば、この激ヤバ映画を御年71の監督が撮ったということに驚きを隠せないだろう。
「これはいわゆる大作とは違う。爆薬やアクションも登場しない。扱うのは人間の持っているリアルな闇や暗黒な面だ。それを娯楽作品としても成り立つように描く。実際、笑えるしね。
今回、監督と一緒に、どうやったら慣例通りじゃない映画作りをできるか考えた。そしてジョーダンというキャラクターや彼のストーリーに同情や共感は得なくてもいい、とにかく彼の姿をありのままに見せようという結論に至ったんだ。僕らは常に意見を言い合っていた。本当に相応しいパートナーと仕事が出来たと思っているよ」
要は人を騙して成り上がり転落した男の話。オススメできる人生ではない。でもあまりに突き抜けたジョーダンの生き方には、なぜか拍手すらしたくなる(人間としては間違ってるんだけど)。
数えきれないくらい「FU×K!!」という言葉が飛び交うのは当たり前。ジョルジオ・アルマーニのスーツで武装し、大型ヨットや自家用ヘリコプターを乗り回し、貧乏時代を支えてくれた女房を、仕事が軌道に乗ってきた途端に捨てて金髪美女の新妻をゲット。もちろん再婚後も女遊びはし放題。相手には危ない女王様も。ディカプリオが尻に蝋を垂らされ呻くゾ。
そしてもっとも笑わされると同時に“こ、ここまでやっちゃって大丈夫なの?”と心配にすらなるのが、最強の薬で完全トリップするシーンだ。前半からたびたび薬のチャンポンをしてイッちゃってるジョーダンと仲間たちだが、終盤、FBIに目を着けられている最中に、ジョナ・ヒル(本作でアカデミー賞助演男優賞ノミネート)扮する親友ドニーとともに最強のヤクに手を出す。
「あのシーンはとにかくハチャメチャだったね。この作品で監督は即興を推奨していたから、どんどんヤバくなっていった。もちろん事前に演技プランはあったんだよ。でもFBIが盗聴しているかもしれないのに、ヤクが回りすぎてしまう。しかもドニーはFBIのことに気づいていない。
人生最大のピンチといえる場面だ。それでとことんハメを外していったら、あまりにもクレイジーになっていってしまった。結局、ジョナとふたりで顔を見合わせて“自分たち、こんなことやっちゃっていいの?”ってね(笑)。今、思い返してみても、あれは原始人かドラッグモンキーズ。予想をはるかに超えたシーンだったよ(笑)」
「これまでに観たことのないディカプリオがいる」というのが本作の決して宣伝文句に終わっていないと深~く頷いてもらえるはずだ。警鐘を鳴らしたかったというディカプリオ。確かにヤバい男が頂点から落っこちる姿が描かれているのだけれど、困ったことにこのジョーダン、非常に魅力的。自分では叶えられない欲望の限りを尽くしてくれる「漢(オトコ)の中の漢」として、自分は安全なスクリーンの椅子から見守らせてもらおう。
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は1月31日(金)より全国公開
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
<取材・文/望月ふみ 写真/渡辺秀之>ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi
1月28日、ハリウッドスター、レオナルド・ディカプリオへのインタビューが実現した。 しかしディカプリオと聞くと、あの舳先(船の先端部)でのラブポーズと共に頭をセリーヌ・ディオンの曲が流れる『タイタニック』現象が起きてしまう人も多いだろう。もしくはさらに遡って、水槽越しに視線を交わして恋に落ちる『ロミオとジュリエット』か。
いずれにせよ、ディカプリオ=女性が好きなスターのイメージである。だが、今回彼が携えてきた新作にして、主演男優賞を含む5部門でアカデミー賞にノミネートされた『
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