「若者の右傾化」は本当?世論調査の“数字”をどう見るべきか
新聞やテレビでよく目にする世論調査。これはしばしば、「世論を正しく反映していない」、「マスコミが真実を歪めている」などと批判されてきた。しかし、そこには大きな誤解があるという。政治学者で東京大学先端科学技術研究センター准教授の菅原琢氏が語る。
「よく世論調査を批判する根拠として、『平日昼間の電話調査だから主婦と高齢者に偏る』と言われますが、まずこれが間違い。実際は週末や夜間も調査をして、意見が偏らないように調整されています。こうした情報は秘密にされているわけではなく、ネットで検索すれば新聞社のサイトなどに出ている。携帯電話を対象としていない問題も、携帯限定層の割合は低く、固定電話層と政治意識の顕著な差もない ため、現在のところ大きな影響はないと考えられます」
また、選挙における支持候補の調査などでは、事前予測と大差のない結果になることがほとんど。「世論調査結果が現実と全く異なるなら予測は当たらないはずです。 自分の意に沿わない現実に直面した人たちが、世論調査をスケープゴートにして叩いているという側面がある」と菅原氏は言う。
では世論調査をはじめとする「統計」と付き合う際には、どのような点に気をつけるべきなのか。
「例えば先日の都知事選の得票データが報じられたとき、田母神俊雄候補に若年層の多くが投票し、若者が右傾化していると話題になりました。しかし低い投票率を勘案すれば、20代~40代の各層で10%未満の票しか得ていないことがわかります。投票した人が右寄りかもわからない。それなのに、先入観による誤解や耳目を集めるための”曲解”によって『若者の右傾化』と騒がれた。政治報道でのデータ分析の貧しい現実です」
つまり調査で得られた数字自体はフラットでも、その切り取り方ひとつでどんな風にも解釈することができてしまうということ。
「数字そのものではなく、その数字が生まれ、報じられる背景が重要です。世論調査であれば質問を確認する。そしてその数字に着目する理由を批判的に想像し、解釈を鵜呑みにしないことが大切です」
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【菅原琢氏】
政治学者、東京大学先端科学技術研究センター准教授。著書『世論の曲解』のほか、共著に『平成史』など
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