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“VAIO復活”の兆しを閉ざした「トップ陣の判断」

ソニーがVAIO事業から撤退する――このニュースは少なからぬPCファンを動揺させた。’97年のデビュー以来、物欲をそそるモデルを発表し続け、われわれの財布を脅かしてきた輝かしいブランドに、一体何が起きたのか? ◆VAIOはなぜ凋落していったのか
VAIO

昨年夏モデルでは「VAIO復活」を感じさせたが……

「VAIOが決定的に変わってしまったのは’09年以降です。’08年9月のリーマンショックを受けて先進国が伸び悩み、まだ成熟していない新興国マーケットを開拓しようとした結果、それまでの“普通のPCではないユニークな製品”というコンセプトから、“幅広く受け入れられやすい中庸な製品”というコンセプトへシフトしてしまった」と解説するのは、ITジャーナリストの本田雅一氏。 「ですが、幅広く受け入れられる製品なら、別にソニー製品でなくても構わないわけです。コスト的にも、販売台数580万台のVAIOが、5800万台クラスのレノボやHPに太刀打ちできるわけがない。VAIOではないセカンドライン的な新ブランドで展開していればまだよかったのですが、ソニーはVAIOの知名度をそのまま利用しようとした。その結果、販売目標にはまるで届かず、さらにブランド力まで落すという最悪の結果を招いてしまったのです」  その半面、VAIOの“ものづくり力”自体はまったく衰えていなかったと本田氏は言う。 「というのも、作っている人自体は昔から変わっていないんです。さらに、’12年に平井一夫新社長が就任してからは風向きも変わりはじめていました」  ソニーでなければ作れない“熱量”のある製品を作る――という平井氏の経営方針の下、「VAIO Duo13」をはじめとするオリジナリティあふれるモデルが相次いで発表されたのは、ほんの1年前のことだ。 「昨年夏のモデルでは、『レッドエディション』の存在も、ソニーの元気回復の象徴と期待していました」と話すのは、ジャーナリストの大河原克行氏。
レッドエディション

好評を博すも、1世代で終了した「レッドエディション」

「その名の通り、質感の高い『レッド』カラーを施した製品であり、丁寧に塗装を重ねて手磨きで光沢を出した、特別カラーのVAIOです。これをDuo、Tap、Pro、Fitという素材もデザインも異なる4カテゴリーのモデルすべてで展開するというのは、余力なくしてはできないことですよ」 ⇒【写真】はコチラ
https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=606778
 このレッドエディション、特別なモデルを求めるユーザーにはすこぶる好評で、またたく間に完売したにもかかわらず、1世代で生産終了してしまった。 「結局は、コストがかかるというリスクにトップ陣が怖気づいてしまったのでしょう。現場では常に新しい取り組みに挑んでいたのに、肝心なところでコンサバな判断しか下せなかった」(本田氏)  かつてのVAIOが戻ってきた――とファンを安堵させた矢先の撤退は“無念”の一言である。 ― [VAIO]はどこへ向かうのか【1】 ―
VAIO Duo13

2013年夏モデル SVD13219CJW

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