消費増税分の価格転嫁を阻む「値上の壁」とは?
4月1日から消費税が8%になり商品の値段が一斉に上がった。しかし、さまざまな事情により「価格転嫁できない商品」が存在する。そこには、いったいどんな問題が潜んでいるのか。
4月15日発売の週刊SPA!では、『[消費税増税の悪夢]密着ルポ』と題し、消費税増税で苦悩する業界についてレポート。飲食店から町工場、さらには意外な業種まで、価格転嫁できない理由と、その結果窮地に陥り苦悩する様を取材している。 <取材・文/小山田裕哉>
【坂口孝則氏】
未来調達研究所取締役。調達・物流コンサルタント。著書に『営業と詐欺のあいだ』、『調達・購買の教科書』など多数
調達・物流コンサルタントの坂口孝則氏が語る。
「今回は1997年の5%増税時よりも、全体としてかなり価格転嫁できている印象です。ただ、そんななかでも、転嫁が難しいケースはあります。それは値段が一定のラインで固定されてしまっているもの。消費者の間に、『これはこのくらいの値段が相場』というイメージが強く植え付けられている商品です。我々はこれを“値上げの壁”と呼んでいます」
例えば、コンビニやスーパーの幕の内弁当なら500円以内が相場と言われている。それが増税により500円以上になれば、どうしても「高い」という印象を与え、売れなくなってしまう恐れがある。
「なので、企業は3つの方法で価格を抑えようとします」と坂口氏は指摘する。
(1)下請けに負担を転嫁して調達コストを下げる
(2)内容量を減らすなど中身を変える
(3)自社で増税分を負担する
ほぼすべての企業が、このどれかのパターンに分類されるという。
「(2)と(3)は企業努力の範囲で、多かれ少なかれほとんどの企業がやっている。一方、問題なのは言うまでもなく(1)です。公正取引委員会に相談窓口を設置するなど政府も対策を強めていますが、下請けの中小企業からしてみれば、『値下げ要請を拒否したら切られるのでは……』という“予期恐怖”があり、経営状況が悪くても言葉を飲み込んでしまう。こうした実態は、表面に出てこないので把握するのも難しいのです」
しかも昨今は価格力で勝る海外企業との競争激化により、製造業から食品業界まで、“仁義なき値下げ合戦”とでも言うべき事態が起こっている。一方で、原油高や円安により、事業にかかるコストは上がるばかり。
「苦しい現状のなかでもいかにコストを抑えて低価格を実現するのかは、もはやビジネスの大前提。もしそこで発注先から、『増税相当額を値下げしてほしい』と暗に指示されたら……。『これ以上、下げられるところなんてないよ!』と叫びたくなるのが本音でしょう」
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