会社員が「ダークサイド」に堕ちないための護身術
ニュースを賑わせる“不祥事”の数々。組織ぐるみの大事件が耳目を集める一方で、最近とみに増えているのが、「フツーの会社員がとんでもない事件を起こす」という事例だ。「上司に叱られたくない」「ノルマが達成できていない」といった焦り。「会社に搾取されている」という不満。よくある悩みは、いつしか増殖して平凡な会社員を闇に落とす――
◆ダークサイドに堕ちないための護身術
すべての識者が繰り返し強調したのは「仕事上のトラブルや悩みを、一人で抱え込む人間がいちばん危ない」という点だ。その対処法として、産業医の榛原藤夫氏(仮名)がキーワードに挙げたのは、なんと“懺悔”!
「欧米人は、実にカジュアルにカウンセラーを利用します。悩み相談は“専門家へ外注”するのが彼らのスタイル。これはキリスト教の“懺悔”の文化の延長線上にあると考えられます。一方、日本では、悩みは友人や知人に相談するものですから、友達のいない人はどうしても一人で抱え込まざるを得ない。そして“壊れて”しまってからドクターに診せるわけですが、それでは手遅れなんですよ」
ストレス反応がうつや問題行動に出る前には、「不眠」や「(疲労または現実逃避としての)過眠」などの兆候が出ることが大半。その段階でどんどんカウンセリングを受けるべき、と榛原氏。
「中小企業でも、業界の健康保険組合で数回くらいは無料カウンセリングが受けられたりします。地方自治体で実施している場合もあるので、まずは検索を」
精神科医の春日武彦氏も、相談の有効性を語る。
「長い人生、流れをどうにもできないまま、ツキが戻ってくるのをじっと待つしかないことも珍しくありません。そこで覚悟を決めて、苦しいまま待てるのか。そこで人間としての器量が問われます。とはいえ、自分を客観視するのはとても難しい。だからこそ、他人に話すことは大切なのです」
ネックになるのは「プライド」。
「プライドが高すぎると、他人に弱みを話せなくなる。仕事がうまくいってないことを知られるのを恥と思ってしまう。でも、たまにはお腹を見せないと!結局、弱音を吐けるヤツが、メンタル的にいちばん強いんですよ」(春日氏)
弱音を吐ける程度に自尊心を抑えるには、経営コンサルタントとして数多くの企業のリストラに携わってきた中沢光昭氏のアドバイスを。
「リストラ不安からダークサイドに堕ちる人は、リストラがまだ珍しかった時代の感覚を引きずっている人なんじゃないでしょうか。このご時世、リストラは自分だけに非があったわけではなく、その会社と相性が合わなかったくらいに考えていいんです。自分を全否定されたかのように考えないこと」
最後は、北方謙三先生の“あの名言”で締めくくりたい。
「昔は、酒場や風俗で愚痴って救われる部分があったと思うんです。そこが懺悔室であり、カウンセリングルームだった。悩みを抱えているなら、キャバクラでカッコつけてる場合じゃない。まさに『ソープへ行け!』ですよ」(春日氏)
【榛原藤夫氏(仮名)】
社員の健康管理を専門とする産業医として、10社以上の企業でメンタルケアに携わる。うつ病で休職中のサラリーマンの復帰支援も行っている
【春日武彦氏】
精神科医。都立墨東病院精神科部長などを経て、現在も臨床に携わる。人生の味わいをテーマにした著作多数。近著に『待つ力』(扶桑社刊)
取材・文/江沢 洋 田中麻衣子 古澤誠一郎 撮影・CG/高仲建次 イラスト/もりいくすお 図版/ミューズグラフィック
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