天才ピアニストのイタリア人に、急に呼び出されてみた【ジョヴァンニ・アレヴィ来日インタビュー】vol.3
また今年も、「21世紀のモーツァルト」が日本にやってきた! 世界的な成功を収めている作曲家・ピアニストにして、「前世は本当に日本人だったかもしれない」と思っているほど日本を愛してやまないイタリア人アーティスト、ジョヴァンニ・アレヴィ氏(Giovanni Allevi)が6月16日に5度目の日本ツアーのために来日した。そして、ジョヴァンニ氏はなぜかSPA!をも愛してくれており、その日の夕方に「急だけど、明日インタビューに来ませんか? 話したいこともありますし」とのお誘いが。
そりゃ、ミラノの野外コンサートに1万2000人集めたり、ローマ法王に楽曲を献上したりするようなビッグアーティストにご指名されれば馳せ参じますとも! ということで、6月17日、翌日に東京でのコンサートを控えたジョヴァンニ氏に通算3度目となるインタビューを行うことになった。
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――では、今回のツアーについて。1年ぶりの来日ですが、昨日、また日本に到着してどんな感覚になりましたか?
ジョヴァンニ:今年はさらに「また日本で演奏できる」ということに喜びを感じていまして、なぜならば客席と自分がひとつにつながる、という関係がしっかりと見えているんです。観客から力をもらえる、ということを考えたら、本当にうれしくて仕方がない。ボクハニホンジンカモシレナイ、という感覚に本当になっているし、自分を理解してくれる人が増えてきていることに喜びを感じています。
去年、鹿児島で演奏したときに桜島を見ました。噴煙を上げている火山を見てなんと美しいんだ、ということと同時に、これは以前に見た記憶の中にあった、という衝撃を受けました。だから、本当に日本人だったのかもしれないな、と思ったんです。
――ハハハ。相変わらず、日本人としてはうれしいお言葉です。
ジョヴァンニ:今は、いろんなことにじっくり取り組むことが大切だと思っています。ひとつの成功を収めると人間というのは「次も次も」という欲が出てくるもので、そういうことを考えたりするんだけど、最近の自分というのは、ひとつそういう成功例があったら、その幸せを充分かみしめる。それで、また時間をつくってよく考えて、次の段階へ進む、ということがやっとできるようになりました。
とにかく、「自分の中に持っているもの」を伝えることが自分の使命で、それは例え目の前に観客が2人しかいなくても、5万人いても全然変わらない。平等にそれを伝えていくのが、自分の一番の大事な部分じゃないかと思っているんです。
だから、ほかの人と自分がお互いにいいなと思っているものを共有できれば一番の幸せなんですね。コンサートのあとにお客さんにサインしていることも、お客さんやプロモーターなどとの約束だからやっているのではなくて、ひとつひとつに「共有をしたい」というプロセスがあるんだ、ということを知ってもらいたいんです。
――そういう変化というのは40代半ばになって、さらにお子様も生まれたという変化がもたらしているんでしょうか。それとも、何か別の原因があるんでしょうか。ないしは原因などないようなものなんでしょうか。
ジョヴァンニ:最初にそういう自分自身の内面にあるものを人々に聴いてもらおう、共感しようという思想が出始めたのは18歳のときでした。そこから少しずつ変わっていきながらも、いろいろと進化していっています。
さらにその前はテクニックばかりにこだわっていたけれど、結局、テクニックだけで人に伝わっていくものではないというのがわかったのが18歳のとき。そこからどんどん進化していったんですけど、やはり音楽の中に潜んでいるものを正確に伝えていかなくてはいけない、という使命があるんです。
だから自分の曲を作曲しながら人に聴かせるというのは、自分の人生であり、また人生が冒険なんですよね。
もちろん、たくさんの困難もありましたし、自分がこれが正しいと思っていても周りが受け入れてくれないこともたくさんありました。また、いろんな共演者と演奏しながら、改めて自分の音楽を見直すことができたり、素晴らしい共演ができたりして、そういったことがひとつひとつの冒険でしたね。
――さて、明日(6月18日)からはいよいよ日本ツアーの開幕ですが、今日はこのあと、ピアノを弾きにいくと聞いています。リハーサルですか?
ジョヴァンニ:今日はリハーサルというよりも、集中力を高めるためにピアノの部屋に籠りたいんです。コンサートは明日からでも、自分の中ではコンサートはもう始まっています。コンサートをすること自体を、まず自分の中で消化しなくてはいけないし、すごい楽しいものだ、ということを常に思わなければいけないので、準備するのには時間がかかったりします。
――ピアノを持っていない、ということは毎回毎回聞いていますけど、演奏するピアノに対してはこだわりはあるんですか。それとも、ジョヴァンニさんはどんなピアノでも弾きこなしちゃうよ、といった感じなんでしょうか?
ジョヴァンニ:イタリアですと、自分がどういうタイプのピアノを好み、どういう音色を好むか、どういう柔らかさを好むかと、そういうことを知っている調律師が近くにいるんですね。だから、その人たちとの作業により、どの楽器が来ても、だいたい一つの自分のラインというのを見つけてやっています。
本当に自分という人間はチャランポランで、いろんなことに対して頓着がないんですけど(笑)、ピアノのことだけに関しては集中しなくてはいけない。
自分にとってピアノを弾くということは「猫の手」と一緒なんです。猫の手でピアノを奏でる。というのは、猫の手というのは肉球があり、鋭い爪がある。その両方をうまく使わなくてはいけない。やわらかい部分もなくてはいけないし、鋭い部分もなくてはいけない。
今の時代、クラシックにおいてはアグレッシブであり、エレガントな演奏が好まれるんですけど、それだけじゃないと思います。何にこだわるかというと、ピアニッシモと「どうやって柔らかい音を出せるか」ということにこだわっていきたい。ご存知でしょうが、ピアノは演奏するのがとても難しくて、ピアニッシモになれば特に難しい。でも自分の感情をより伝えられるのがピアニッシモなんです。こういうのは、禅の感覚と似ていると思うんですか、いかがでしょうか?(笑)
――すいません、ちょっと私には「なんとなくそうなのかなぁ」以外の言葉が出てきません(笑)。では、今日はこのあとどれぐらいピアノのある部屋に籠って集中力を高めるんでしょうか。それは時間が決まっているようなものではないような気がしますが。
ジョヴァンニ:はい。時間は重要じゃなくて、ピアノを触りながら馴染むことができるかどうか。それを感じられたときにもうそれで十分なんです。テクニカルなものではなく、感覚的なもので、それがわかった時点で自分は切り上げることができます。
――それはまさに「禅的なもの」なのかもしれないですね。さて、今回の日本ツアーももちろん楽しみですが、今年はアルゼンチンにも行かれるそうですね。
ジョヴァンニ:はい。でも、自分はこんな人間なので、情報をあんまり知らないんです(笑)。やっぱり自分の人生は一方通行なんですね。音楽しか見えなくてまっすぐ行く、と。それがまた自分にも合っているんです(笑)。
【ジョヴァンニ・アレヴィ ピアノソロ コンサート ジャパンツアー2014】
6月18日(水) 東京・浜離宮朝日ホール 音楽ホール
6月19日(木) 静岡・静岡音楽館AOI
6月22日(日) 京都・京都市立京都堀川音楽高等学校 音楽ホール
6月24日(火) 鹿児島・かごしま県民交流センター 県民ホール
6月25日(水) 名古屋・5/R Hall&Gallery 音楽ホール
6月27日(金) 大阪・あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール
詳細は以下へ http://le-himawari.co.jp/galleries/view/00064/00270
<取材・文/織田曜一郎(本誌) 通訳/堂満尚樹 撮影/難波雄史 取材協力/多治見智高>
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