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1曲で9人を演じ分ける。黒木渚初の楽曲提供で、こゑだが見せた脅威の歌唱力と表現への貪欲さ

 新型コロナですべての人が立ち止まっている現在――。過去に「立ち止まった経験」をもつ2人の女性シンガー・ソングライターがタッグを組んだ。  中学3年生でニコ生系のクリエーター集団「supercell」のゲストボーカルとしてデビューしたこゑだは、2015年にソロデビューしたあと約2年半、活動が停滞した。2012年のデビュー後、小説家としても活躍する黒木渚は2016年に「咽頭ジストニア」という自分の声をコントロールできなくなる病気になり、活動休止と再開を繰り返してきた。  互いにそれらの苦難を乗り越えようとしていた矢先、全世界の人々と同様に、2人も新型コロナウイルスの影響で思っていたような活動ができなくなった。ただ、2人には「立ち止まった経験」があるからこそ、戸惑いつつも、このコロナ渦の状況でも比較的スムーズに表現活動を続けている。  黒木渚、初の楽曲提供となる新曲「V.I.P.」でこゑだが見せた驚きの表現方法とは?

黒木渚が初の楽曲提供、プロデュースをしたこゑだの「V.I.P.」

――このコロナの状況になってから、多くのミュージシャンと同様、2人ともネット配信などで発信を続けています。特にこゑださんは中学2年生からニコニコ生放送の「生主」として歌を歌い出し、2000人の応募があったオーディションを経て「supercell」のゲストボーカルになったという経歴があるので、YouTube、ツイキャスなどの配信もお得意ですよね? こゑだ:私は小学校5年生からパソコンにハマって、反抗期の頃はネットの世界にどっぷりで、心配した母から「あんたはずっとそんなところに引きこもって! 顔が電車男みたいになってるよ!」と言われていたぐらいなので(笑)。ソロデビューしてからは一時期、どう自分で動いていいのかがわからない時期があったんですけど、「自分で動かないと物事は動かない」ということに気付いて、昨年からオフィシャルの活動に加えて、自主製作やYouTubeの配信なども自分の意思で始めました。なので、コロナの自粛期間もライブができないぶん、ミュージックビデオを公開したり配信したりしながら「今は自分でつくりたいものをつくる時期なんだな」とつくり続けていましたね。 黒木渚(以下、渚):こゑだちゃんに比べると私は「お姉さん」だし、バンド上がりのけっこう伝統的なタイプのミュージシャンなんで、ネット配信するための機材を買って、慌てて勉強して、コロナの最初の頃は「機材鬱」みたいな感じにはなりましたね(笑)。ただ、喉の病気もあって活動が停止することには慣れていたから、ほかのアーティストさんが「やばい、活動止まっちゃった、何かしなきゃ」ってなっているときに、けっこう序盤から「よっしゃ、つくろう!」って切り替えは早かったと思います。ちなみに、私もインスタやYouTubeでの生配信を始めたんだけど、コメントって、どのぐらいの頻度で拾えばいいの? こゑだ:いやねぇ、それ、私もちょっと研究中なところはあるんですけど、目についたら(笑)。 渚:手当たり次第いったほうがいいっていう? こゑだ:私の場合、配信はすごいアットホームにやっているので、家の中にいっぱい友達がいて、なんか「わー」って言ってて、それに「あー、だよね」みたいなぐらいのテンション感で拾うっていう(笑)。 渚:じゃあ、私も割と気さくなことを心がけて(笑)。ちなみにこゑだちゃんのやってきたニコ生での音楽の世界は、私はわかっていない部分も多いんだけど、とにかく複雑で、ギミックが多くて難しいというイメージがあって。音階とか転調の数とかも普通のポップスよりもかなり多いし、歌のメロとかもどこで息継ぎしたらいいんだろうって思うぐらい、テクニカルなことをしているなぁという印象。だから、歌い手さんの中にもものすごいクオリティの人がたくさんいるんだろうなぁ。 こゑだ:実は、私がソロデビューしてから活動が停滞してしまったのは、とにかくニコ生のボカロPさんたちのやっていることのレベルが高すぎるっていうのが、自分の「呪縛」になったという面もあるんですよ。あの人たちは本当にすごくて、作詞作曲、アレンジ、で、歌は初音ミクが歌うので、そこも全部1人でやっている。だから私も自分で曲はつくり始めていたけど、「私も、作詞作曲、歌、あとアレンジもやらなきゃ!」みたいなのがあって。ほかにも、仕事の進め方がわからなかったりとかいろいろあったんですが、「あ、自分が動けば、人は助けてくれるんだ」ということに気付いてからは動きやすくなりました。 渚:でもそれって、こゑだちゃんが18歳とか19歳の頃の話でしょ。私は中高と全寮制の学校で世間から隔離されていたから(笑)、大学のバンドサークルではっちゃけていた年齢の頃の話だもん。すごいなぁ。
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黒木渚もこゑだも「歌をバカにされた怒り」が原動力だった
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