政治活動とセクシュアルマイノリティ差別 週刊チキーーダ!(飯田泰之&荻上チキ)緊急調査 vol.4

 なお、今回のアンケートに対し、自ら同性愛者であることをカミングアウトしている、豊島区の石川大我区議、中野区の石坂わたる区議より、「同性愛者議員へのセクハラ事例」として、長文の回答が寄せられたので、紹介したい。

政治活動■一般的に思うのは、議員という仕事は“個人事業主”なので、監督、指導する立場の人間がいない、ということです(本来は有権者がその立場を担うべきなのでしょうが…)。「発言には政治家として責任をもつ」という大義名分のもと、当選すれば、何を発言しても許される、と考えている議員は少なからずいると思います。

例えば最近、兵庫県議会の委員会で県のHIV施策に対して、自民党の議員が「行政が率先して、いわゆるホモの指導をする必要があんのか」「好きでやっとる話やから放っといてくれという世界」という差別発言を行いました。神戸新聞などが報道し、全国の当事者団体が抗議と申し入れをしましたが、結局、本人の謝罪も反省の弁もありませんでした。

“日本で初めてゲイであることをオープンにした議員”という立場でいえば、日常、セクハラを受けている当事者とも言えます。「石川さん、結婚していないの?」「独身とは、選り好みしているのね!?」「どんな女性がタイプ?」「お子さんは何年生?」などです。“男性が女性を愛して当たり前”の社会では、多くの同性愛者が、常に自分の意に反する会話をしなければならず、まさにこの状況はセクハラだと思うのです。

また、7月より「男女雇用機会均等法」の施行規則が一部改正になり、同性間のセクハラもセクハラとして認められるようになりました。例えば、上司が部下を性風俗に誘う、独身男性に対して「お前ホモか?」と聞くなどです。今回、性的マイノリティであるLGBTに対する差別的な言動や行動が、セクハラと認められたことによって、事業主の防止措置義務対象であることが担当課長の答弁で明らかになりました。今後、事業主が行う研修や相談がLGBTを想定したものに変化していくと思われます(豊島区議・石川大我・社民党)


■有権者から、異性愛者であることを前提としたような言葉をかけられたり、「結婚は?」「お子さんは?」「事実婚なんて中途半端は良くない」と言われることがよくあります。私の場合は、時間がある場合には、自分のセクシュアリティ(男性同性愛者であること)や、日本のLGBTの置かれている状況などについて突っ込んで説明をしていますし、そうした結果、相手から「海外だと当たり前なのに、日本だと同性同士は結婚できないんですか?」というような質問が返ってくることもあり、性的マイノリティについての啓発に繋がるようなこともあります。なので、一概に聞かれて迷惑ということもないです。

しかし、ゆっくりと説明をする余裕や時間のない場面も少なくなく、結婚や子どもについて聞かれたり、異性愛者であることを前提とした話をされるとその場で対応をしきれないので困ることも多々あります(少なくとも、「結婚」や「子ども」についての発言は性的ハラスメントに繋がる可能性があるという意識をもつ人は増えてきていますが、相手が異性愛者である前提での発言も性的ハラスメントに繋がる可能性についてはほとんどの人がまだ意識できていないように思われます)。

また、「(私を指して)先生は、コッチ?」などと、悪意や同性愛者を蔑視したような性的ハラスメント発言も目の当たりにすることもあります(同性愛者に対する差別用語の使用や差別的対応が性的ハラスメントであるという意識がない方もいらっしゃるのだと思います)。

なお、私がいない場で、同性愛者の議員(私)がいることを揶揄した若手のより革新的な会派の先輩議員に対して、他の同期のより保守的な会派の議員が私をかばう形で口論になったことがあったと後で聞いたことがあります。自分がその場にいたわけではないので詳細はわかりませんが(中野区議・石坂わたる・無所属)


 性に関するハラスメントは、同性同士の圧力でもありえるし、異性愛を前提としたコミュニケーション空間のなかでも起こりうる。セクシュアルマイノリティであることをカミングアウトしたうえで活動している議員はまだ日本では少ないが、こうした体験談から見えてくる課題は重い。特定議員の問題、あるいは男性から女性へのセクハラという問題にとどまらず、広く人権の問題、議会運営の適正化の問題として考えていく必要性がわかる。

⇒【vol.5】「『性差別野次問題』を、一時の“騒動”で終わらせないために」に続く

<文/荻上チキ>




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