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中国未出場なのに…人民がW杯で盛り上がっていた理由

中国

鄭州市ではW杯にかこつけて、(売れ残った?)マンションを販売!

 W杯ブラジル大会は熱狂のうちに幕を閉じたが、意外な盛り上がりを見せたのが、出場すら果たしていない中国だった。  在中国ブラジル大使館によると、W杯観戦のため、ブラジルに渡った中国人は約5000人にものぼったという。W杯観戦のため、ブラジルを訪れた峯田孝市さん(仮名・38歳)はこう話す。 「飛行機は中東経由のサンパウロ行きだったのですが、機内はとにかく中国人だらけ。会場近くでも、出場していないくせになぜか五星紅旗を広げてる集団もいるし……(苦笑)。アジア人の観戦者の中でも、最も目立っていましたね」  中国国内も、負けず劣らずの熱狂ぶりだった。『中国情報網』によると、テレビや動画サイトなどでW杯を観戦した視聴者は、少なくとも2億人。大手会計事務所・デロイトは全世界の視聴者を10億人と見積もっており、5人に1人が中国人ということになる。  自国が未出場にもかかわらず、視聴者を釘付けにしているのには裏がある。北京市在住の日本車メーカー勤務・内田義隆さん(仮名・44歳)は話す。 「W杯期間中、私の周りの中国人は、みんなサッカー賭博をやっていた。友人同士やネットの違法サイトなどで賭けるんですが、関連の部品工場では、従業員の睡眠不足と注意力散漫で生産効率が大幅に落ちたそうです。私の携帯にも、賭博サイトから毎日何件ものスパムメールが届いていました」 『中央電視台』(7月6日付)によると、ネット上で違法サッカー賭博サイトが乱立しており、集められた賭け金の総額は数兆円にのぼったという。現地報道ベースでは、W杯期間中、少なくとも5人がサッカー賭博で大金を失ったことを理由に自殺している。  サッカーと関係のない分野でも、“便乗商売”は花盛りだったようだ。7月2日、陝西省西安市で開催されたモーターショーでは、コンパニオンが露出度の高いサッカー風ユニフォーム姿で登場(『中新網』)。また、河南省鄭州市では、妙齢の女性11人がへそ出しルックで住宅販売プローモーションのため、街を練り歩いた(『網易』7月6日付)。広東省東莞市のメーカー勤務・高島功夫さん(仮名・37歳)もこう証言する。 「あるキャバクラでは、W杯期間中、ユニフォーム姿の小姐11人をセットで指名できる、キャンペーンをやっていた。11人分のチップがかかるのに、中国人の成り金はW杯を観戦しながら、団体でちちくりあっていて、ずいぶん楽しそうでしたよ……」  しかし、「中国人のW杯への熱狂は、近い将来、から騒ぎではなくなる」と話すのは、“トラブル孫悟空”でお馴染み、ジャーナリストの周来友氏だ。 「無類のサッカー好きである習近平が主席になって以来、『’22年のカタール大会までに日本を超える』という目標が密かに立てられ、ナショナルチーム育成に大きな予算が組まれている。一方、『中国は卓球やテニス、ビリヤードなど、ボールが小さいスポーツは強いが、ボールが大きくなるとダメ』というジンクスがあり、『FIFAに圧力をかけ、ボールを小さくすれば中国は強くなる』という声もある」  現在、中国はFIFAランキング103位だが、昇り龍のごとき急上昇を見せる日は来るか!? <取材・文/奥窪優木> 週刊SPA!連載 【中華人民毒報】 行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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