五十嵐大介特集本に映画『リトル・フォレスト』主演の橋本愛が登場
文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した『魔女』『海獣の子供』などの作品で熱狂的なファンを持つ漫画家・五十嵐大介。その圧倒的な画力とスケールの大きい幻想的な物語は海外での評価も高く、同業者からのリスペクトも集める。そんな唯一無二の存在感を放つ作家の特集本『文藝別冊・五十嵐大介』(河出書房新社)が発売された。
美麗な表紙イラストは描き下ろし。単行本未収録のレア作品3本(計40p)のほか、なんと描き下ろし新作10pも収録! この新作『ムーン・チャイルド』が実にエロくて美しくて怖い問題作で、ファンならずとも見逃せない。
作品づくりの舞台裏はもちろん少年時代の意外なエピソードも披露したロングインタビュー、『精霊の守り人』『獣の奏者』シリーズで知られる人気作家・上橋菜穂子との対談は読みごたえたっぷり。詳細年譜、未公開のアイデアメモやラフスケッチ、ネームなど貴重な資料も満載だ。
そして、それにも増してすごいのが寄稿陣。黒田硫黄、小田ひで次、西島大介、都留泰作、志村貴子のトリビュートマンガ、諸星大二郎、渡辺ペコ、松本大洋、森本晃司のイラストメッセージに加え、伊坂幸太郎、柴崎友香、石川直樹のエッセイも。また、長沼毅(生物学者)、中沢新一(人類学者)、山下裕二(美術史家)が、それぞれの専門の立場から五十嵐作品を語るコーナーもあり。「豪華ラインナップの寄稿陣で、なんだか恐縮です」と五十嵐さん自身が驚くほどのメンバーが名を連ねる。
さらに、五十嵐作品初の映像化となった映画『リトル・フォレスト』(http://littleforest-movie.jp/)(「夏・秋」8月30日から公開中、「冬・春」2015年2月14日公開)主演の橋本愛、監督・脚本の森淳一へのインタビューも収録。
都会から岩手の山村にUターンして自給自足の生活をする女性・いち子を主人公にした物語で、初めての農作業に挑んだ橋本さんは「これをずっと毎日何時間も、しかも毎年繰り返すって、そういう無限に思えるサイクルにめまいがしそうでしたね」と語る(同誌インタビューより)。しかし、そう言いながらも映画の中ではゴム長に首タオル姿で田植えや薪割りを堂々とこなし、料理シーンでは合鴨をさばいたりと大奮闘。森淳一監督によれば「彼女はどこに行っても『筋がいいね』って言われてましたから」というからさすがである。
映画にはおいしそうな食べ物がたくさん出てくるが、一番おいしかったのは「『夏』ではイワナの塩焼きですね。(撮影に)インして初めて食べた食べ物だったというのもあって、衝撃的なおいしさで。『秋』では栗の渋皮煮がすごくおいしくて」とか。
公開となった映画について五十嵐さんからは「いち子と共に、小森(物語の舞台となる山村)のごはん、小森の風景、小森の音に、心地よくたっぷり浸ってください」とのコメントが寄せられた。映画と特集本、どちらも満腹間違いなしだ! <取材・文/日刊SPA!編集部>
『文藝別冊・五十嵐大介』 世界の姿を感じるままに |
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