更新日:2016年04月05日 20:57
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映画から学ぶ「火山災害の恐怖」

 9月27日に発生した御嶽山(おんたけさん)の噴火による死者は合計54人(10月7日現在)に上り、火山活動による災害では戦後最悪となった。行方不明者を含め43人の犠牲者を出した平成3年の長崎県・雲仙普賢岳の被害を上回るもので、4日に捜索を再開して以降も山頂付近で新たに心肺停止とみられる4人を発見するなど被害はさらに拡大しそうだ。 ◆110山もある日本の活火山  3.11の時、私達は改めてこの国が「地震列島」であることを痛感したが、今回の噴火では、この国が「火山列島」であることを思い知らされることになった。活火山とは「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」(気象庁ホームページ)のことを言う。これが現在110火山もあるというのだから驚く。しかも、このうち47火山は噴火の危険性から24時間体制で観測・監視しているのだ。  こんな状況だからこそ、改めて火山の恐ろしさを疑似体験しておくことも一考だろう。そこで、今回は参考になる2本の映画をご紹介しよう。 ◆噴石の恐怖をリアルに再現 ダンテズ・ピークダンテズ・ピーク』(’97)は、CG技術を駆使してリアルな噴火を描いたことで話題になったハリウッドのパニック超大作だ。1億ドルを超える製作費を投じ、「タイタニック」のアカデミー賞・最高視覚効果賞受賞で一躍脚光を浴びたデジタル・ドメイン社が、噴煙・溶岩・火砕流の破壊力を見事なまでに再現している。  アメリカ北西部の太平洋岸に位置する架空の休火山“ダンテズ・ピーク”に、USGS(全米地質学調査団)の火山地質学者ハリー・ドルトン(ピアース・ブロスナン)が調査のため訪れる。ハリーは、調査の末に噴火の可能性が高いとして、町長のレイチェル・ワンダ(リンダ・ハミルトン)に避難勧告を出すように直訴する。だが、上司のポール・ドレイファス(チャールズ・ハラハン)は慎重派で首を縦に振らない。そうこうするうちに突然噴煙がもくもくと沸き立ち……というお決まりのパターンだ。  しかし、アメリカ地質調査所カスケード火山観測所が協力しただけあって、噴火のプロセスとディテールは息をのむど迫力で圧倒される。  映画はのっけから、ハリーの婚約者が次々と降り注ぐ凄まじい噴石の犠牲となるエピソードで幕を開ける。噴石とは、噴火の際に飛び出した溶岩または岩石が固まったもの。これがクルマの屋根を突き破って婚約者の頭を直撃するのだ。御嶽山の噴火でも、高速で飛んで来る噴石による外傷が死因になったと言われる。厚さ10センチ程度のコンクリートに穴をあけるほどの威力だという。  気象庁の記者会見で、火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣東大名誉教授は、「噴石は秒速200メートルを超えるスピードで飛んで来るものもある。時速に換算すると野球のボールどころではない」と、その並外れた衝撃の大きさを伝えた。少なくともヘルメットが必需品になることは間違いないだろう。  火山灰や溶岩流、土石流の描写も目を見張るものがある。  赤く燃える溶岩にレイチェルの義母の家が襲われるシーンだ。当時、専門家などから「溶岩流の動きが早過ぎる、誇張だ」と言われたが、そのすぐそばを駆け抜ける一家がほぼ無傷なのもちょっと気になる。しかし、実際のところ、溶岩流は高熱ではあるが人の歩く速度よりも遅いことが多く、恐ろしいのは時速100キロを超える場合もある火砕流の方らしい。藤井教授の言葉を借りれば「火砕流に遭遇したら諦めて頂くしかない」だそうだ。ビジュアル的には煮えたぎる溶岩のインパクトが強いだけに意外と感じる人は多いかもしれない。 ◆噴気孔の恐怖と「凍りつき症候群」  もう一本は、同じ年に公開された『ボルケーノ』。  缶コーヒー「BOSS」のCMでお馴染のトミー・リー・ジョーンズ主演のこちらもパニック超大作だ。ロサンゼルスの地中に亀裂が入り、マグマが噴き出るという荒唐無稽な話だが、危機管理の観点から参考になる点は多い。 ボルケーノ 地下水道で熱さとガスのために倒れる作業員が続出するシーンから始まるのだが、二酸化硫黄や硫化水素が噴出される火山性ガスや高温の噴気孔に近付くとどうなるかがよく分かる。  映画では、主にカリフォルニア州の緊急事態管理局局長を務めるマイク・ローク(トミー・リー・ジョーンズ)の視点から、前代未聞の溶岩流に人々が一致団結して立ち向かう様子が描かれる。そんなシチュエーションはありえないと言えばそれまでだが、目の前で溶岩流が出現しているのに、逃げるどころか携帯電話で実況し続ける者いるなど、災害心理学的な側面から見ると実に興味深い。  防災・危機管理アドバイザーの山村武彦は「人間には『自分だけは大丈夫』と期待する本能がある」「見たくないものは見えない、信じたくないものは信じられない」(「人は皆『自分だけは死なない』と思っている―防災オンチの日本人」宝島社)と指摘したが、その言をなぞるかのように企業や自治体関係者の対応の不味さが命取りとなる。これは個人レベルでも同様だ。想定外の事態に遭遇し、逆に動きが鈍くなる「凍りつき症候群」というのがある。マイクの娘が迫り来る溶岩流に足がすくんで、逃げることができずに「パパ助けて」と叫ぶシーンがそれだ。背後の安全地帯に走ればいいだけなのだが、危機的状況では脳が正常に働かない場合がある。誰でも普段からこういったパニック心理に関する意識は持っておきたいところだ。  また、劇中では火山学者が「火山弾はちゃんと落ちる地点を見極めてからよける」とアドバイスするなどすぐに役立つミニ知識も少なくない。 ◆登山ブームだが……そもそも近付かないことが「安全への近道」!?  気象庁の記者会見では、「そもそも活火山に登ることにはリスクがある」と注意を促した。  そして「それが困るというのであれば、活火山に近付かないというのが一つの方法です」(藤井教授)と率直にコメントした。当然、そんなリスクがあるからこそ休火山や死火山を選ぶという人もいるだろうし、改めてリスクを承知の上で登るという人もいるだろう。いずれにしても、登山に対する認識は御嶽山の惨事を機に大きく変わることは間違いない。今回の火山映画はその参考資料として活用して頂きたいところだ。  日本生産性本部の「レジャー白書2013年」によると、登山人口(年1回以上登山した人)は’12年に860万人(!)と前年より50万人も増加。4年前の’08年と比べると270万人も増加している。ビギナー、ベテランを問わず、登山者には、今後の山との付き合い方について再考することが求められているのではないだろうか。 <取材・文/真鍋 厚>
テロリスト・ワールド

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ダンテズ・ピーク

『バンク・ジョブ』のロジャー・ドナルドソン監督が、大自然の猛威をCGを駆使して描いたパニック大作

ボルケーノ

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