エンタメ

歌人・枡野浩一“ツイッターに書き連ねた詩”刊行

枡野浩一『くじけな』/文藝春秋より6月15日発売/700円(税込)

「『くじけな』ってタイトルの詩集を出してみたい」……歌人の枡野浩一さんがツイッターでそうつぶやいたのが今年の2月11日。以来、思いつくままにツイッターに書き連ねた詩が、なんと本当に一冊の詩集として刊行されることになった。  タイトルは、もちろん『くじけな』。どこかで聞いたようなタイトルだが……? 「〈柴田トヨ『くじけないで』を手にとって棚に戻した(くじけそうです)〉という短歌をツイッターに書いたことがあるのですが、ずっとあの本を手にとることができませんでした。こわくて。のちに読みましたが、残念ながら私は、あれでは励まされませんでした」と枡野さん。そこで考えたのが、「『くじけな』というタイトルの詩集を出したらどうだろう」ということだった。 「実は以前に、大好きなドラマ『淋しいのはお前だけじゃない』(市川森一脚本)のもじりで、『淋しいのはお前だけじゃな』という本を出したことがあり、その流れで唐突に思いついたんです。思いついた日に、ツイッターで発表し始めました」  最初に発表した表題作「くじけな」は、こんな詩だ。  くじけな/こころゆくまで/くじけな/せかいのまんなかで/くじけな/くじけな/くじけないでと/はげますあいのつよさに/くじけそうなときには/くじけな/くじけな/よし/くじけてよし/くじけたこころにしか/みえないものをみあげ/ほほえんでいればよし   パロディといえばパロディなんだろうけど、「くじけないで」と言われるより、むしろ前向きな気持ちになれる気がする。こんな調子で「夢をあきらめな」「君は一人じゃな」「小さいことにくよくよする」「大切なことはすべて君が教えてくれ」といった作品を次々に発表。それが出版社の目にとまり、今回の出版となったわけだ。 「ツイッターの140字以内で完結するという制約はありましたが、短歌にくらべたら何倍も長いので、むしろ楽でした。リズムの変化、うねりを楽しみながら書いていましたね。あと、“有名な言葉のもじりや駄洒落から発想する”というワンパターンのルールの中で、一編ずつ、微妙な変化をつけることも楽しみました」  ツイッターでの連載(?)中に東日本大震災が発生。そのため「途中で詩の色合いが微妙に変わっています」という。震災後、日本中にあふれた「がんばろう」「負けないで」といった言葉に違和感を覚える人ならば、きっと共感できると思うけど、枡野さん自身は本書について、こう語る。 「今まさに激しい苦しみと闘っている、絶讃くじけ中の人には、届きにくい本かもしれません。一見、恵まれた環境にいるはずなのに、目に見えない部分で闘わなくてはならないような、松尾スズキさんが言うところの『ぬるい地獄』にいる人に届けばいいと思います。震災直後であっても、『ぬるい地獄』は、そこかしこにあるでしょうから」  6月19日には、刊行記念イベント「くじけな祭 kujikena_sai」も開催される。元ARBの白浜久や作家の山川健一らのライブのほか、長嶋有×枡野浩一のスペシャル対談など、レアな内容。くじけそうな人も、そうでない人も、一見の価値はありそうだ。  詳細は、「枡野浩一公式ブログ」をご参照ください。 取材・文/新保信長
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