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加藤豪将も参加した「ヤンキース」のエリート養成キャンプとは?

 メジャーリーグの選手育成は、どのように行われているのか?  そうした裏事情は通常なかなか我々の目や耳に触れる機会がないためベールに包まれているが、メジャーでも名門中の名門ニューヨーク・ヤンキースが今年から、メジャー昇格前の若手有望株の中で選りすぐりの選手を集めた英才教育を始めたことが話題になっている。
加藤豪将も参加した「ヤンキース」のエリート養成キャンプとは?

加藤選手のTwitterにはジーターとの2ショットも投稿された(画像は加藤選手のTwitterアカウント)

「キャプテンズ・キャンプ」と名付けられたその若手英才教育プログラムは第1回である今年、15人の未来のスター候補が集められ、そこにはあの加藤豪将内野手も選ばれていた。  加藤は米国カリフォルニア州で生まれ育ったが日本人の両親を持ち、2013年のドラフト2巡目(全体66番目)でヤンキースに入団した現在20歳の有望株。日本人選手がメジャーリーグのドラフトで指名されたことはそれ以前にもあったが、ここまで上位で指名されたのは加藤が初めてとあって大きな話題となり、日本の野球は経験していないものの日本人である内野手が果たしてマイナーから一歩ずつ段階を経てメジャーまで上り詰めることができるかどうか、注目されている存在だ。  その加藤が15人の若手精鋭の1人に選ばれ、今年1月半ばから6週間の「キャプテンズ・キャンプ」プログラムに参加していた。  同プログラムの内容は、実に多岐に渡っている。  まず球団の編成幹部らが、どれだけ熱心に練習することや忍耐力を持つことが重要であるかという選手としての心構えや考え方を教え、球団専属トレーナーは選手個々が頭に入れておくべき栄養学とエクササイズの方法を講義した。  グループ学習の授業もあり、そこではチームワークとはいかなるものかを実践を通して学び、全員で小児病院を訪問するなどしてグループでのボランティア活動にも取り組んだ。  また、球団で働くグラウンド整備スタッフにグラウンド整備のいろはを教わる授業もあり、そこでは整備スタッフがどれだけ丁寧で繊細に整備を行っているか、選手が少しでもパフォーマンスを上げられチームの勝利につながる整備の仕方とはいかなるものかといったことを理解する機会が設けられた。  選手たちは整備スタッフの話を聞き彼らの思いに触れることにより、チームは選手25人と監督、コーチだけで戦っているのではなく、裏方スタッフも一緒に勝利のために力を尽くしているのだということを学ぶというわけだ。  同プログラムには、ゲスト講師も何人か登場した。  その1人が昨季限りで現役を引退したヤンキースのキャプテンでありレジェンドであるデレク・ジーター氏で、参加した若手選手たちにも事前には知らされていなかったサプライズ登場だったという。  15人の若手たちはジーター氏と食事をともにし、多くのことを教えられた。  メジャーにまで登り詰めるにはどうすればいいか、メジャーに昇格してからそこに留まる方法は、ニューヨークでプレーするということのプレッシャーとはいかなるものでその乗り越え方とは、といった内容を微に入り細にわたってジーター氏に語り尽くしてもらったという。  メジャーきってのスーパースターで誰からも一目を置かれるジーター氏からアドバイスを得たことは、若手たちを興奮させ、モチベーションを上げるきっかけになったのはいうまでもない。 「キャプテンズ・キャンプ」のプログラムを考案したヤンキースのゲーリー・デンポ編成担当副社長は「デレク・ジーターは、プロの野球選手とはどうあるべきかをまさに体現した存在だ。彼はトップになりたいという情熱を持ち、野球というスポーツを敬い、敵を敬い、高潔さと王者の品格というものを持っている。我々球団は、若手たちをジーターのような選手に育てたいと考えている」と話す。  つまりこれは、ヤンキースという名門球団が野球エリートとなるだけでなく人間的にもエリートとなれる人材を育てる特別な英才教育プログラムというわけだ。  ただ単に選手としての能力を向上させるだけでなく選手の人間形成にも力を入れ始めたヤンキースは今季、球団OBである松井秀喜氏を傘下マイナーチームを巡回して打撃指導を行うGM特別アドバイザーに抜擢することを発表したが、松井氏のこの新たな仕事も「キャプテンズ・キャンプ」を考案したデンポ編成担当副社長との二人三脚で行われる。  デンポ氏は「打撃アプローチに関していえば、マツイほど細かいことにまで気を配る選手はいない。大抵の選手が打撃ケージでティーを打つと5分か10分で終えるが、彼は30分は打つからね」と話し、若手が松井氏の打撃アプローチを学ぶことを望むと同時に、言葉が通じない環境の中で苦労しながらチームに溶け込み日本人メジャーリーガーとして成功した同氏の人柄からも学ぶことを期待している。  こうした新たな試みが数年後、球団にどのような効果をもたらすか。大いに注目である。 <取材・文/水次祥子>
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