全裸でデート!? 米国TVの恋愛リアリティショウ――“ありのまま”すぎる演出で訴訟沙汰にも
これが恋愛リアリティショウ番組の行き着く先。アメリカではそういわれているとか、いないとか。
恋愛リアリティショウ番組といえば、日本ではフジテレビで放送されていた『あいのり』や『テラスハウス』がお馴染みだ。参加者の男女が番組で知り合い、番組が設定したシチュエーションの中で恋愛を育んでいけるかどうかを追うという構成で『あいのり』はバスの旅であり『テラスハウス』はシェアハウスだった。この秋に『テラスハウス』が終了することが発表されると、惜しむ声も数多く見られ、恋愛リアリティショウ番組の人気の高さがうかがえた。
アメリカにも以前からこの手の番組は多く、かなりの人気を集めている。昔は男女同じ人数が参加し自分の恋人になり得る相手を見つけていくという単純な設定のものだったが、それがさまざまな形に発展し、例えば何人もの女性参加者が1人の大富豪イケメン独身男を奪い合うというスタイルのものもあった。その番組は大富豪イケメンが最終的に1人の女性を選ぶのだが、さらに最後に男が「実は自分が大富豪というのは嘘で、本当は貧乏なんだ」と告白し、それでも女性は彼とカップルになることに同意するかどうかというところまで紆余曲折を入れ込んだ構成だった。
そんな発展を遂げてきたアメリカの恋愛リアリティショウ番組に、この夏から驚くべき設定のものが登場している。7月17日からケーブルテレビ局VH1で放送開始されたその番組は『Dating Naked(裸でデート)』という。参加者の男女が番組で顔を合わせ、第一印象で気に入った相手とデートを重ね、最終的にカップルになるかを決めていくという内容で、デートをする場所は南国リゾート地だ。しかしただデートをするのではない。男女ともに全裸でデートをするのだ。
もちろんテレビで一般家庭に放送する番組なので、視聴者が観る映像にはバストや局部にぼかしが入っている。それでも番組収録は本当に全裸で行っているので、ぼかし処理をする部分が多少ずれて一瞬チラ見せ状態になることもあるらしい。そんなこともあって、放送開始からSNS(ソーシャルネットワークサービス)などでかなり話題になっていた。
デートは、最初は普通に浜辺に座って語り合うといった設定だが、何せ出会ったばかりな上にお互い裸なので、会話も挙動もぎこちない。初めての裸デートで男が「僕が一番心配していたのは、その、僕が、興奮し過ぎてアレしないかってことなんだよね」と言えば、女も「どこに視線をもっていけばいいか、困るわね」と言う。お互いが必死に首から下を見ないようにしているカップルもいる。
かと思えば、最初の全裸デートからノリノリのカップルもいる。お互いに「ありのままの姿」であることが親密さに拍車をかけるのか、初デートの夜にはもうベッドを共にしたカップルもいた。初日の夜に関係を持ったということをテレビで紹介されてしまうのも相当恥ずかしいことだと思うが、アメリカ人はそうでもないのだろうか。もっともそのカップルは早くも結婚を決め、9月には婚約スペシャルが放送されるらしい。全裸でデートというイロモノ設定のわりには、参加者は案外真剣なのかもしれない。
ところでこの全裸デートは、ただ座って語り合ったり裸でレストランで食事をしたりというだけではない。デートで乗馬やサーフィンをしたり、男女で泥んこレスリングをして遊んだりと、かなりアクティブなデートも行われている。もちろん全裸であるため躍動する男女の肉体も見ることになるので、視聴者はこれまでの恋愛リアリティショウ番組にはなかった別の楽しみ方もできるというわけだ。
◆「ぼかし」を巡って訴訟沙汰まで!
しかし問題はぼかし部分である。躍動しているためにぼかし部分がずれたり、制作側がうっかり見逃してぼかすのを忘れているというケースが出てくる。そのため先日は、遂に裁判騒動まで起きた。女性の参加者の秘部が無修正のままになっており、かなりキワドイ状態で映像に出てしまったというのだ。
ニューヨークでモデルをしているというジェシー・ニズウィッツさん(28)というその女性は、テレビ局と番組制作会社を相手に1000万ドルの損害賠償を求める訴訟を起こした。起訴状には「私はこの番組に出演するに当たり、撮影時にヌードになることは承知していましたが、私のプライベート・パーツ(秘部)はテレビではぼかしを入れると聞いていました。この番組を見ればおわかりの通り、ぼかしを入れた姿はビキニを着ているよりも露出が少なくて済みます。私のプライベート・パーツ(秘部)が映し出されるとは思いもよらなかったのは明らかであり、このようなことは私自身も他の出演者も予想していませんでした」と書かれている。彼女の出演回が放送された際にはツイッターなどで冷やかしを受けたり笑いものにされ炎上状態となり、精神的苦痛でふさぎ込んだ状態だとか。その出演回で共演した男性は、問題の場面が放送されてからはぴたりと電話をしてこなくなり、それが苦痛にさらに拍車をかけているという。
起訴されたテレビ局は訴訟に関しては口を閉ざしており、今後も番組は継続予定。しかし番組の内容が内容だけに、今後もさまざまな騒動が起こりそうだ。
<取材・文/水次祥子>
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