更新日:2015年08月05日 15:23
恋愛・結婚

うつ状態の彼氏と同棲を続ける自信がない【女性・27歳の悩み】

【佐藤優のインテリジェンス人生相談】 “外務省のラスプーチン“と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える! ◆「うつ状態の彼氏と同棲を続ける自信がない」
カラゴンズ(ペンネーム)会社員・女性・27歳
 10歳年上の彼氏と同棲しています。つき合って4年ほどになるのですが、その間彼がまともに働いていたのは6か月ぐらい、就職してもろくに続きません。  彼は以前から心療内科に通い、「うつ状態」との診断を受けています。彼の実家は会社を経営しているので、そこに戻って働くのもいいと思うのですが、それは嫌なようです。生活費はすべて私が出しています。かといって家事をするわけでもなく、おまけに「なんか気分じゃない」らしく、かれこれ半年はセックスレスです。  とはいえ、「お嫁さん」だの「頼れる旦那様」への憧れが捨てきれません。セックスもしたいです。彼の家族には「迷惑をかけてすまない、どうぞよろしく頼む」と言われているのですが、自信がありません。別れるべきでしょうか? 覚悟を決めて彼を養うべきでしょうか? うつ状態の彼氏と同棲を続ける自信がない【女性・27歳の悩み】◆佐藤優の回答  結論から言うと、別れるべきと思います。あなたの心の中に<「お嫁さん」だの「頼れる旦那様」への憧れが捨てきれません。セックスもしたい>という気持ちがあるのなら、その気持ちに忠実に行動すればいいと思います。  人間には共感するという仕組みが備わっています。この点について、心理学者のポール・ブルームはこう述べています。 <サイコパスと正常な人を隔てているものは何か、もう少し考えてみよう。サイコパスには多くの特徴がある。常習的に嘘をつくとか、自責の念や罪悪感がないとか。しかし、決定的な欠陥は他者の苦痛に対する無関心だ。サイコパスには思いやりがない。  サイコパスでない人たちにとって、思いやりはどう働いているのだろう? それを理解するためには、思いやりと共感を区別することが重要だ。最近の研究者たちの中には、この二つの言葉を同じ意味で使う人もいるが、他者を気遣う行為(思いやり、もしくは同情compassion)と、他者の身になる行為(共感empathy)の間には大きな違いがある。  アダム・スミスは、共感という言葉を使っていない(「empathy(共感)」は、一九〇九年に「感情移入」 という意味のドイツ語「Einfuhlung」を元につくられた言葉だ)。しかし、スミスは共感を次のように巧みに説明している。「私たちは、[他者の]体の中に入り込み、ある程度その人と同じ人物になる」共感は強力な、しばしば抗いがたい、衝動だ。舞台の上で、コメディアンが照れくさそうにしているのを見たら、こちらまでもじもじしてしまう。隣に興奮している人がいると、そわそわする。笑いは伝染する。涙もだ。(中略)小説家のジョン・アップダイクは、幼少期の回想録で、「祖母が台所のテーブルで窒息の発作を起こすたびに、同情を覚えて、のどがぐっと詰まる感じがした」 と語っている。>(『ジャスト・ベイビー』44~45頁)  共感(あるいは同情)と愛情を混同してはいけません。同棲相手の実家は、会社を経営してるので、あなたが同棲を解消しても、相手が路頭に迷うことはありません。  相手に必要なのは精神科医の診察を受けて、きちんと薬を飲んで、うつ状態から抜け出すように努力することです。あなたがそばにいることで、却って、相手の治療機会を奪ってしまう可能性があります。  あなたが同棲相手を心の底から愛していて、「この人の介護に一生を捧げてもいい」と考えているならば、その気持ちを貫き通せばいいと思います。しかし、あなたは「この人を捨ててしまったらどうなるだろう」という不安感から、同棲を続けているのだと思います。  こういう感情を抱えていると、人生がうまくいかないのは同棲相手のせいだという気持ちになってきます。そうすると日々の生活が苦痛になります。勇気を出して同棲を解消し、新しい出会いを探すことをお勧めします。 【今回の教訓】 共感と愛情とを混同してはいけません ◆募集 佐藤優さんへの相談を募集中。匿名希望の方はペンネームを記入してください。採用者には記念品をお送り致します。 ⇒応募はコチラから https://nikkan-spa.jp/icol_form 【佐藤優】 ’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『読書の技法』『日本国家の神髄』『人生の極意』など著書多数 (※写真はイメージです)
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数

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