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ムダな道路計画でミカン農園が分断。強制収用されるも闘い続ける岡本栄一さん

◆採算性の怪しい高速道路が50年続くミカン農園を分断 ~岡本農園(福岡県)農家が徹底抗戦するムダな道路計画~
岡本農園(福岡県)

「税金のムダ遣いになるうえ、必要性の乏しい道路に自分の命(農地)は売れん」(岡本さん)

 福岡県豊前市の農家・岡本栄一さんは、減農薬ミカンを約50年間作り続けてきた。海に近く、太陽が降り注ぐ南向きの山の斜面に広がるミカン園は12 haにも及び、温暖な気候の東九州を象徴するような景観を形作ってきた。ところが、この景観をブチ壊す高速道路建設計画が進行中だという。 「私のミカン園のど真ん中を東九州自動車道椎田南~宇佐線が突き抜ける予定になっています。私にとって命ともいえるミカン園の分断は、断じて許せません。しかし、西日本高速道路会社は私の切実な願いを無視して強制収用を行いました。どうしても必要な事業ならまだしも、ムダな道路のために私の“命”を売るわけにはいかない」(岡本さん)  7月14日、福岡県職員らは岡本農園を強制収用する「行政代執行」に着手。岡本さんは農園内の小屋にたてこもり抵抗したが、県職員に抱えられ退去させられた。  高速道路「東九州自動車道」(福岡県北九州市~鹿児島県鹿児島市)の計画が18年前に浮上して以降、岡本さんは計画見直しを求めて迂回ルートの提案や、自ら費用対効果を算出してその計画の不採算性を確認、建設差止訴訟(行政訴訟)をするなど、徹底抗戦を続けてきた。 「山の斜面にあるミカン園を切り土で45mも掘り下げれば、水脈が分断されて左右の農園が乾燥、大きな被害が出るのは確実」(同)  東九州自動車道が今年春に開通した大分県佐伯市蒲江では、岡本さんが懸念する被害が起きている。盛り土をする道路工事が本格化した後、近くのミカン園でとれたミカンにシミが出るなどの品質低下が2年連続で発生、廃業に追い込まれたというのだ。 「盛り土構造の東九州自動車道ができて、ミカン園が盆地状態になり、山からの冷たい下降流が停滞して寒害となったと推測しています」(佐伯市蒲江のミカン農家)  高速道路に分断される岡本農園は、さらに大きな被害が予想される。岡本さんの闘いはまだ続く。 ― こっそり進む[ニッポンの風景]破壊計画 ―
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