世界遺産隣接地の“古代の森”にマンション建設計画―― 「下鴨神社」式年遷宮の費用捻出に疑問の声
景観・歴史・文化・環境・生態系などの破壊に目をつぶり、ひっそりと進行している開発計画は数多い。それは本当に必要な事業なのか? 地元住民はどれだけ情報を与えられているのか? 全国各地で進められている、“あまり知られていない”開発計画の現状をリポートした!!
◆式年遷宮の費用捻出で“古代の森”が危ない
~下鴨神社(京都府)世界遺産隣接地の森林破壊~
平安京建設以前からの歴史を誇る、世界遺産・下鴨神社(京都市左京区)。その鎮守の森である「糺の森」に、8棟のマンションを建設する計画が持ち上がっている。
下鴨神社では、21年に1回「式年遷宮」を行っている。1000年近く続く、社殿を造り替える定例行事だ。これに「約30億円の費用がかかる」(同神社広報)という。「国からの補助金は約8億円しかありません。企業などからの募金だけでは追いつかず、費用を賄えません」(同)。
そこで神社側が考えたのが、世界遺産指定地域ではない部分に50年契約の定借マンションを建て、その賃料で費用を賄うという案だった。一方、周辺に住む氏子たちからは厳しい意見も出ている。
「神社側から誠意のある説明がありません。そもそも30億円の根拠も不明確。前回の式年遷宮は15億円でした。また周辺の敷地を、近年だけで時価6億8000万円分も買い増しています。会計について、いつも貢献している氏子や周辺住民に対してもっと丁寧に説明すべきでは」(「糺の森未来の会」世話人・人見明さん)
◆神社側は「伐採」ではなく「移植」と断言
同区に住む日本画家、北畠彩子さんも、この計画に疑問を感じている一人だ。
「この地域は世界遺産指定地域を保護するための“バッファゾーン”(緩衝地帯)となっています。それがなくなることで、世界遺産指定地域自体への影響も懸念されます」
古くは枕草子や源氏物語にもその名が残る「糺の森」は、平安以前の形をそのままとどめているともいわれる古い森だ。なかでも“移植”対象となっているニレ科の木々は、古代の森を知る貴重な手掛かりとされ、環境や生態系の面からも反対論が出ている。
心配されている古木の伐採については「すべて移植し、伐採はしない」と同社広報は取材に対して断言した。
神社側としても、自らの鎮守の森を切り売りするようなことはしたくないだろう。バッファゾーンを保護地域にしてもらう政策的措置や、式年遷宮のあり方の見直しなど、神社側と地元や氏子が折り合えるような解決策はないものだろうか。
― こっそり進む[ニッポンの風景]破壊計画 ―
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