静岡、岐阜、埼玉…地方を舞台にしたアニメが急増している理由
今夏に公開された映画『シン・ゴジラ』と『君の名は。』の大ヒットにより、ますます注目を集めているアニメ業界。『シン・ゴジラ』で総指揮をとった庵野秀明監督は『新世紀エヴァンゲリオン』で知られ、『君の名は。』の新海誠監督はポスト宮崎駿・細田守と称される、気鋭のアニメーション映画監督だ。
静岡県を例にとってみよう。現在放映中で、大人気アニメの続編となった『ラブライブ!サンシャイン!!』は沼津市を舞台に描いており、天野こずえの漫画を原作とした『あまんちゅ!』は伊東市と熱海市を舞台として描いている。
静岡市の広報を担当する関係者によると、「静岡市では、映画の撮影を支援するフィルムコミッションを通じて、アニメの制作会社にPRしています。また、推理小説シリーズの『ハルチカ』がアニメ化した際には、ロケハン案内をするなど、アニメ制作会社と積極的に関わる取り組みをしています」という。
静岡市と言えば、言わずと知れた国民的アニメ『ちびまる子ちゃん』の舞台であるが、一方で、アニメファンの間では深夜アニメがほとんど放映されない“アニメ不毛の地”と揶揄されてきた。これまでにもラッピング電車の運行や、その車内アナウンスの一部を「まる子」の声にするなどの仕掛けを行なっており、アニメを観光資源として連動した取り組みには積極的だ。市の関係者も「ちびまる子ちゃんランドへの入場者数が、インバウンド含め増加しています」とアニメによる観光客増に期待を寄せている。
いま話題の『君の名は。』も岐阜県飛騨市の風景が描かれており、聖地となった岐阜県の各所には、これまでに多くの観光客が訪れているという。埼玉県秩父市を舞台に描いた2011年のTVアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の大ヒットに際しても、埼玉近郊のみならず日本全国、海外から秩父を訪れるファンが相次いだ。映画館での劇場版公開による「あの花」ブーム再燃でも、たびたび“聖地巡礼者”が訪れたという前例がある。
アニメ事情に詳しいライターの芝村メイ氏は「これまでにも、作画の美しさに定評がある京都アニメーションは京都と滋賀を丹念に取材し、『けいおん!』や『響け!ユーフォニアム』といった名作を生み出してきました。『花咲くいろは』『SHIROBAKO』『ハルチカ』などを制作してきたP.A.WORKSも富山県に拠点があり、北陸地方を舞台にした作品がいくつか見られますね」と説明する。
クールジャパンの筆頭としても期待されるアニメ業界だが、近年はその作品内で描かれる風景に地殻変動が起こっている。2000年には4本しかなかった「実在の場所を描いた」アニメの本数も、2014年には91本と15年間で20倍以上に。そこには、アニメ制作会社と地方自治体のウィンウィン関係があった。
「アニメ聖地巡礼」に地方自治体の熱視線
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