更新日:2022年09月25日 10:47
カーライフ

インプレッサの300台限定車で“脱セカンド童貞”。♂の欲望復活!【下流自動車評論家マリオ高野】

彼これ10年ほどセックスから遠ざかっている、下流自動車評論家のマリオ高野であります。敗因はいろいろ思い当たりますが、ネットの普及に伴うオナニー環境の劇的向上により、セックスなしでも一定以上の性的満足が得られるようになったことはかなり大きいと言えましょう。 三次元の生きた本物の女子との「まぐあい」とは、果たしていかなるものであったのか。もはや遠い過去すぎてすっかり忘れてしまったことで腰が引け、ますます実戦から遠ざかるばかりですが、「セックスとは、たしかこんな感じだった!」と、いにしえの記憶を思い出させてくれるクルマを運転する機会に恵まれました。 ⇒【フォトレポート】はこちら https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=136404 STI S206,マリオ高野そのクルマは「STI S206」というインプレッサの高性能モデルです。スバル・インプレッサのトップスポーツモデル「WRX-STI」をさらに強化した限定販売車で、国産車の4枚ドアの中では史上最強の性能が与えられ、カーナビを付けて諸費用を入れると600万円を軽く超えるという、スバル車としては史上最高値の定価で販売されました。にもかかわらず、発売から2週間ぐらいで限定300台を売り切ったというニュースには大変驚きました。 「エコカーにあらずんばクルマにあらず!」という今のご時世にあって、燃費などはハナっから眼中にない、320馬力の武闘派スポーツモデルがアッサリ完売したとは本当にビックリ! いかに限定販売とはいえ、一番安いグレードなら155万円で買える国産車に600万円も出す人が、日本には300人もいたのです! 「国民総スポーツカー離れ」は真っ赤なウソだった! レクサスとかGT-Rみたいに、誰の目にも高そうに見えるカネ持ちオーラを巻き散らかす系のわかりやすいクルマと違って、S206は一般的にはその良さがわかりくいクルマです。クルマオタクでない人には普通のインプレッサと見分けがつかないというのに、そんなことは微塵も気にせず600万円を支払う好事家が300人も存在するという事実は、クルマ好き、スバル車ファンとしてはうれしい限りでありました。 600万円出せば、ベンツやBMWの大衆モデルが余裕で買えますし、中古ならフェラーリやポルシェも選び放題ですが、それら高級外車には目もくれず、群馬県産に飛びついた漢たちはクルマ愛好界のサムライと呼んで讃え尽くすべきでしょう。 そんな感じで即売御礼と相成ったS206ですが、乗れば600万円の高価格も十分納得の逸品でした。 まず、ごく普通の速度で普通の道をただ真っ直ぐ走ってるだけで「これはイイッ!」と、思わずあえぎ声を漏らしてしまうほど気持ちイイのです。 STI S206タイヤが道路の上をどんなふうに転がっているのかが手に取るように実感でき、まるで自分の手で路面を撫で回しているかのような感触が味わえるのですが、その手触りがとにかくエロいのです。ハンドルを握っているというより女体のやわ肌を撫でているようで、路面の凹凸やうねりが女体のくびれに思えてきました。 道路が女体のやわ肌に思えるほどですから、ハンドルを握る手には全身全霊の集中力が高まります。この身体のスイートスポットはどこにあるのか? 強く触れてはいけない部分はどこなのか? なんてことを手探りで見つけることに全神経を集中する行為に没頭していくと、次第に日常生活における邪念や煩悩のすべてが頭の中から消え去り、ただひたすら運転に対する集中力が高まっていきました。 クルマ雑誌的にいうと「路面インフォメーションが良い」とか「ロードホールディング性が良い」という言葉で片付けられますが、そんなレベルではありません。S206での一般道走行は、性行為における前戯だと思いました。10年以上ぶりに体験する、男としての本能を揺さぶる興奮です。 この、いつもに増して気色の悪いうすら笑いを浮かべる自分の表情からも、S206の運転が性的興奮を喚起するクルマであることが証明されているといえるでしょう。 マリオ高野気持ち良さのあまり山道へ行かずにはいられなくなったので、その勢いで大好きな茨城県・筑波山のパープルラインへ行ってみると、想像をはるかに超えるエクスタシーに打ちのめされました。 一応、このマリオも走り屋の端くれなので、山道では自分の技術で可能な範囲で飛ばしたいという衝動にかられます。山道を飛ばすとことの醍醐味は「限界への挑戦」にほかなりません。 クルマの性能的な限界と、自分の技術的な限界、あるいは精神的な限界を探りながらできるだけ速く走ることに挑戦するわけですが、いかに高性能なクルマでも、「対話」ができないクルマで飛ばすのは怖いものです。 タイヤのグリップ力やブレーキの効き具合を探りながら徐々にペースを上げて行くなかで、クルマ側から伝わってくるものが希薄だとそれらが判断できず、身を削るような緊張感にまみれながら嫌な冷や汗を流すことになります。 それらの情報がよく伝わってくるクルマなら、質の良い緊張感を伴いながらイイ汗を流す充実感が得られるもの。しかし、S206で得られるその感触はあまりにも濃厚でした。 STI S206普通の道で静かに転がしている領域では、こちらが一方的に肌を撫でるだけに過ぎませんでしたが、峠道ではクルマ側からも足を絡めて抱きついて来るような積極性が出てきます。自分の運転操作に対して即座に反応するばかりか、「ソッチじゃないの! もっとコッチ! アアそこそこ! ソコをもっと強く!」とでも言わんばかりに、ドライバーの運転操作が良かったのか悪かったのかを伝えてくるのです。久しく失っていた「征服欲」の炎がメラメラ燃え盛りました。 カーブに突入して遠心力がかかり、車体が外側に深く傾きながら旋回するその刹那は、クルマと全裸で抱き合いながら、お互いに身体の隅々まで撫で尽くすような一体感に頭が真っ白。互いの汗も唾液もエンジンオイルもすべて混じり合い、そのまま漆黒の闇の中で溶けていくような……。 なにせ10年もセカンド童貞状態ゆえ、うまく表現できませんが、まさにこれはクルマとドライバーの肉弾戦にほかならず。 「これはセックスだ!」と大昔を思い出し、S206との「まぐあい」に没頭しながら「S206があれば嫁も彼女も要らぬ」という結論に達しかけますが、それは間違いだとすぐに思い直しました。リアルな性的満足感が得られたことにより、同時にリアルな女体に対する欲望が喚起されたのです。 S206の運転で性的な満足感を得らたおかげで、「やはりオナニーばかりではなく、リアルな “まぐあい” がしたい」という、生物の♂として正常な欲望が復活したことはたいへん有意義でした。 クルマの運転も、グランツーリスモなどでは相当リアルな部分まで疑似体験できるようになりましたが、「S206」が与えてくれる甘美な世界を再現するのは到底不可能。ゲームだけで完結せず、リアルなドライブを目指すことを忘れないでほしいものであります。 取材・文/マリオ高野
1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。その後、群馬県太田市へ移住し、現在は太田市議会議員に。X(旧Twitter):@takano_mario
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