更新日:2022年12月26日 01:22
スポーツ

急死した衣笠祥雄さんの名言がしみる「あなたらしい生き方をしなさいね」

 4月23日に急逝した野球評論家の衣笠祥雄氏(享年71)。70~80年代に広島カープの黄金時代をけん引し、2215試合連続出場の記録を持つスーパースター。「鉄人」の異名を持つタフさと、解説などで見せる心優しい一面で広く愛された。  そこで衣笠氏の著書から人柄が垣間見える名言を振り返ってみよう。 衣笠祥雄

①自分は何のために生まれてきたのか。それを必死に考える

 衣笠氏の解説を聞いて、不快な思いをしなかったのはどうしてだろう。そこには現役選手に対する思いやりや野球への深い愛情の他に、決してブレない人生観があったからなのだと思う。著書『水は岩をも砕く』(KKロングセラーズ)の中で若い人へ向けたメッセージが印象的だ。 <「あなたらしい生き方をしなさいね」(中略)自分がどのような人間なのか考える。今いる環境で自分は何ができるかを考える。それを絶えず続けていれば、いつだって人間はいい方向に向かって行けるものではないか。>(p.188)  過大評価することも過小評価することもなく、自らの天分を正しく見極めること。そのために真剣に自分自身と向き合いなさいということなのだろう。  そんな衣笠氏にもプロ入団直後にはヤケになって遊び回っていた時期があったという。しかしそんなピンチのときには監督や上司からの助言に救われた。他人の言葉によって自分が何者であるかを知ることができたのだ。 <人に会えば会うだけ、世の中の広さが知れる。(中略)人の話は自分の心を広げてくれるもの。そうすれば、今まで気がつかなかった自分自身を発見することができるはずだ。>(p.171) 水は岩をも砕く

②欠点を直すより長所を伸ばす

 現役時代、衣笠氏の代名詞はフルスイングだった。歴代7位タイのホームラン504本と、歴代8位の三振数1587の数字が物語っている。しかし、やみくもにバットを振り回していたわけではない。そこには衣笠氏のシンプルな考え方がある。 <得意でないことを一生懸命がんばるよりも、自分の良いところを伸ばした方が成功を導くには正しい方法である。>(p.26)  すぐに目につく欠点を矯正するよりも、自分の長所を深いところで理解し、一生の糧としていくことの方がよほど難しい。だからこそ、衣笠氏はそこに人生の喜びを見出すのだ。 <人から長所を認められる、また、人より勝っていると楽しくなる。しかし、その逆ではつまらない。人間の心として当然の作用だ。人よりも少しでも力がある点を自分で掴み、自分の中心に置くこと。そのことが喜びも、継続も、結果も、すべてを生んでくれる。>(p.27)  氏の紳士的な野球解説も、この長所を見ようとする姿勢から生まれたのだろう。
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たとえ三振したってフルスイングで!
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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