モリタク、尾木ママ…テレビでも有名な教授、授業の評判は?
6月、履修登録や新歓イベントもひと段落した大学でも、授業などに顔を出さなくなる学生がどんなクラスにも一人や二人いたものだ。
1つの講義を1人の教員が受け持ち、評価の基準が教員に一任される大学では、サボっても比較的問題なく単位を取れる授業、ホトケ教授のラク単もあるわけだが、テレビやラジオ、雑誌など様々なメディアで活躍する有名教授の人気講義の評判はどのようなものか。
本記事では実際にその授業を受講したことのある現役学生やOB/OGたちの声を集めてみた。
森永卓郎氏は1990年代半ば頃から評論家・コメンテーターとしての活動を始め、『ニュースステーション』を中心に出演。著書などで早くから年収300万円時代を予測し、現在も『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)金曜日パネリストや、『がっちりマンデー!!』(TBS)など多数のメディアに出演している。食玩コレクションなどのオタク趣味も有名で、2016年にはライザップの結果報告会にも登場した。
獨協大学経済学部教授に就任したのは2006年。今日も「労働経済学」「経済社会学」などの授業で教鞭をとっている。同大学の教員紹介ページの授業方針には、「経済理論を教えるのではなく、理論を踏まえた上で、実際の社会を動かす人たちが、どのような意思決定をしているのか、それによってどのような変化が生じているのかを、社会経験を踏まえてお話していきたいと考えています」とあり、だいぶ噛み砕かれている感。
講義の最初に話す時事ネタもテストでは大切になるそうだが、出席は取らず、HPからレジュメ等の確認もできる上、基本的にはこのレジュメでテストにある程度対応できるそうだ。加えて、「テスト前の最後の授業でテスト問題や模範解答を言ってくれる」など、典型的なホトケ教授であることが伺える。大教室の授業でも抽選になるほどの人気講義となっているそうだ。
講義中の雑談もおもしろいらしく、サイト「みんなのキャンパス」では、「絶対に落としたくない人は自分の持っている知識をひたすら書きまくれば、なんとか認められることも多いようです。ただ、テレビに出る人ということもあって話は面白く、授業に出て損はないと思います」といった投稿が見受けられる一方、ラク単であるため「(出席する)受講者は少ない」という声も……。
2004年に法政大学キャリアデザイン学部教授に就任し、昨年3月で法政大学の特任教授を定年退官した尾木直樹氏。現在は教壇を離れ、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」、Eテレ「ウワサの保護者会」、フジテレビ「直撃LIVEグッディ!」等に出演、講演活動などにも精力的に取り組んでいる。
2009年末、60代で出た情報バラエティー番組をきっかけにブレイクした“尾木ママ”だが、ブーム真っ盛りの2010年に授業を受けていたOGは、「講義が面白いと好評で真面目に聞いている学生がほとんど。最後に感想を書かせるので私語はほぼなく、寝てサボっている人がいても特に怒ったりはしなかった。当時話題の便所メシとか取り上げていました」と振り返る。
笑顔やコメントが優しく学生に人気だった一方、ブログで炎上したこともある尾木ママ。授業でもたまに毒づいていたようで、「『友達作るために入学時にレクレーションさせるなんて大学まで行ってやることじゃない』と過保護な他大学に怒ったり、『あんなに教職関係者に話聞いてもらえなかったのに、最近テレビに出るようになったら態度が変わった。学部にも意見が通りやすくなってビックリ』と語る場面もありました。キャラを作っているわけではないんでしょうけど、テレビウケする可愛らしいキャラを見せているんだな…と思いました」とのこと。
この講義は150~200人くらいの大教室で行われたキャリアデザイン学部生向けの授業だったそうだが、潜りに来た学生の母親のため、授業後にサインをあげたりもしていたそうである。
学生にもよるが、毎週マジメに出席すれば単位の取れる出席点が多い科目もラク単授業のパターンのひとつだが、尾木ママの授業も出席を重視。授業に出ていれば、単位は取りやすかったようだ。
90年代初めから援助交際、オウム真理教などを論じ、一躍論壇の主役に躍り出た宮台真司氏は、2007年4月より社会学分野で首都大学東京教授として教壇に立っている。
「社会意識と社会構造」という講義はサブカルチャーという比較的とっつきやすい題材にしているが、ブログにあるシラバスには、「自らを自由であると意識する者の表現が、意図せずして時代や社会を刻印されてしまうのは、なぜか。本講義では戦後日本のサブカルチャーを素材としつつ、この問いに答える。そこではマルクス主義的な上部/下部構造論や、グラムシ的な文化的ヘゲモニー論は否定され、社会システム理論的な立場から意味論の遷移の基本メカニズムが見出される」と、難解そうだ……。
実際、この講義を受講していた学生からは「教室は200人規模の大教室での講義で100名~150名程度が受講していました。私語をしていようと寝ていようと怒られず、基本的に学生の自主性に委ねられていましたが、難解なこともサラサラと流れるように喋っていくので、学生にとっては付いていくのがやっとの、非常にハードな講義でした」といった声が聞かれた。
この授業は学年や学部は問わず受講でき、音楽や映像などを資料としてよく使っていたようで、いしだあゆみ「ブルーライト・ヨコハマ」や、黒沢清の映画などを取り扱ったという。
記述式の筆記試験は自分で適切な問題を作成して回答するという「自問自答」方式というもので、前出のOBによれば、「評価については比較的厳しめ」とのこと。
ちなみにゼミに入っていたというまた別の学生曰く、「飲み会や食事に行くこともあったが、奢ってくれたことはマジで一度もない」とのことだった。<取材・文/伊藤綾>1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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