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菅官房長官の「携帯料金4割カット」は消費増税対策!? “ポスト安倍”を見据えた発言か

SoftBank announces new service plans

8月の菅発言を受けてソフトバンクは通信料金に限って従来よりも3割程度安くできる新プランの発表会見を行った。端末代と通信費も分離し、端末代の割引サービスはなくなった(写真は新サービス発表会で質問に答えるソフトバンクの榛葉淳副社長)

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「携帯電話料金は4割の値下げ余地がある」  8月に菅義偉官房長官が発したセリフが、今なお波紋を広げている。定例会見でもたびたび「料金が不透明」「諸外国に比べても高い」と携帯キャリアを“口撃”しているためだ。9月には沖縄県知事選の応援演説でも「携帯会社は過度な利益をあげることなく、利用者に還元する必要がある」と主張。その影響で、自公推薦の佐喜眞淳(さきま・あつし)候補が「日米地位協定の改定」と一緒に「携帯電話料金4割値下げ」を政策の一つに掲げ、「知事にその権限はない!」と批判を浴びたことも知られている。  もちろん、ユーザーからすれば4割値下げは願ってもない話だが、なぜ今、論議を呼んでいるのか? 全国紙政治部デスクは「菅さんは10年以上も前から主張していた」と話す。 「’07年には総務大臣を務めていた菅さんのもと、モバイルビジネス研究会を立ち上げ、販売奨励金制度でケータイを頻繁に替える人だけが得する当時の状況を是正するために、携帯端末価格と通信料金の区分を明確化する“分離プラン”の導入をキャリア各社に要請しました。ところが、キャリアは端末代の割賦販売にさまざまな名目で割引制度を導入して、端末代と通信費の分離をなし崩しにした。スマホの浸透でパケット通信費が大きな収益源となると、今度は2年縛り、4年縛りで顧客の囲い込みを進めた。その結果、家計の通信費は伸び続けて、キャリアの収益は右肩上がり。これに菅さんは『公共電波を使って儲けすぎ』という不満を常に漏らしていたため、沖縄県知事選や来年の参院選、消費増税対策を絡めた一石三鳥の効果が望めるタイミングで問題を持ち出してきた」  実際、消費税対策としては抜群の効果を発揮する可能性がある。第一生命経済研究所主席エコノミストの永濱利廣氏は次のように解説する。 「’17年度の家計調査によると、国民一人あたりの移動通信通話料の負担額は年間5万2000円程度。仮に4割安くなると2万円以上下がり、家計全体では2.6兆円の負担軽減になるんです。一方で、日銀の試算では消費税が8%から10%に引き上げられた場合に見込める税収は5.6兆円。ここから軽減税率の財源や教育無償化に伴う必要財源などを差し引いていくと、家計の負担は2.2兆円程度にとどまる。4割カットが実現すれば、消費増税に伴う家計負担増を丸ごとカバーして、消費を刺激する効果を見込めるわけです」 世帯あたりの移動電話通信料 これまた我々にとっては喜ばしい話だが、弊害も少なくない。 「キャリアから2.6兆円の利益がなくなるので、リストラは避けられない。各キャリアは毎年3000億~5000億円の設備投資を行っていますが、これも削減せざるをえず、巡り巡って通信障害が起こりやすくなるケースも考えられる」(永濱氏)  そもそも、日本の通信費が高いという菅官房長官の主張を疑問視する声も上がっている。ケータイジャーナリストの石川温氏が話す。 「総務省が“高い”の根拠としている資料を見ると、日本の利用実態をもとに月々のデータ容量が2、5、20GBの3つのパターンで海外の料金と比較していることがわかります。ところが、2GBと5GBの料金はソウルより安く、総務省も『中位の水準』と指摘している。高いのは20GBの料金だけなんです。そもそもサービス内容は日本と海外とでは大きく異なる。20GBプランだとロンドンは日本の半額以下ですが、地下鉄は圏外だったり、屋外では3Gしか繫がらなかったりする。提供される環境を考えれば、日本が高すぎるとは必ずしも言えないのです」
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