『今日から俺は!!』が若者に大ウケ…’80年代の何に惹かれたのか
賀来賢人と伊藤健太郎が、1980年代を舞台にツッパリ高校生コンビを演じたドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系/22時30分~)が、全10話で平均視聴率9.9%(関東地区/ビデオリサーチ調べ)という好成績を残して放送を終えた(同局ゴールデン帯で放送された『獣になれない私たち』は8.7%、『ドロ刑 -警視庁捜査三課-』は8.8%)。
若手・ベテラン・豪華ゲストから成る座組、型破りで痛快なストーリー、そして福田雄一監督らしい独創的な演出が融合した物語。いうまでもなく、本作の人気の高さには、こうした要素が大きく関わっていたはずだ。ただ、やはり「携帯(スマホ)がない」時代設定は見逃せない。
事実、福田監督は『週刊文春』(12月13日号)のインタビューの中で携帯について言及している。
「『今日俺』には、もちろん携帯電話なんて登場しません。それも僕がこの原作を選んだ理由。携帯ってドラマを壊しましたよね」
福田監督によると、携帯電話の登場によって、ドラマで「すれ違い」を描けなくなったという。確かに、携帯電話が普及して以降のドラマでは、登場人物が簡単に出会えるようになってしまった。それに伴い、ストーリー展開にハプニングが少なくなったし、これに伴い人物間の関係性や物語のドラマ性もどこか希薄に感じられるようになった印象がある。
これに対して、『今日から俺は!!』では、三橋や伊藤が他校の不良やチンピラに絡まれたせいで、誰かと約束した場所に行けなくなるという展開が組み込まれていた。携帯があれば連絡が取れるが、そうできない。だからこそ、面白いすれ違いが生まれていたというわけだ。
携帯・スマホの不在とともに、昨今では当たり前になっているSNSが登場しないことも、若者たちには新鮮だったのではないか。SNSは人と人を簡単に繋ぐことができるが、その半面、窮屈さも感じさせる。
筆者は20代後半だが、我々の世代はSNSがあって当然の社会で育ってきたため、向かい合っての「生のやり取り」よりも、SNS上における「デジタルなやり取り」をしがちだ。またSNSの恩恵にあずかる一方で、窮屈さを感じることも多い。そういった社会の中では、本音をぶつけ合ったりすることが難しくなるものだ。もっと言えば、どこか表面的なつながりが発生しやすい気がする。
やはり、人と人は向かい合ってこそなのではないか? 三橋と伊藤をはじめ、『今日から俺は!!』の登場人物たちが、敵味方を問わず向き合って、お互いの本音や拳をぶつけ合う姿からは、そんなことを感じさせられた。80年代という時代に感じる「生の人間関係」に対する憧憬に似た感情があったからこそ、ストーリーを追っていきたくなっていった。
そんな若い世代は、筆者だけではなかったのではないだろうか。
<文/エンタメライター・優希タカシ>
三橋(賀来)と伊藤(伊藤)をはじめとするツッパリたちと、その周囲の人々が織りなす日常を愉快・痛快に描いた本作だが、興味深いのは、視聴者に多くの若者がいたこと。かく言う筆者も20代だが、このドラマの大ファンだった。
ちなみに、『ザテレビジョン』が発表している、SNSなどにおける話題性を独自に調査し、盛り上がり度を数値化した視聴熱のウィークリーランキングでも、本作は放送開始前から常に上位に位置付けていた。
なぜ、若者の心に響いたのだろうか?
携帯がなくて「すれ違い」があった時代
これに対して、『今日から俺は!!』では、三橋や伊藤が他校の不良やチンピラに絡まれたせいで、誰かと約束した場所に行けなくなるという展開が組み込まれていた。携帯があれば連絡が取れるが、そうできない。だからこそ、面白いすれ違いが生まれていたというわけだ。
SNS世代が抱く「生っぽい人間関係への憧れ」
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