[SPA!編集部]署名活動をした山本和奈さんらが来訪、会談の一部始終
週刊SPA!(扶桑社)2018年12月25日号「ヤレるギャラ飲み」と題する特集での、「ヤレる女子大ランキング」が大変な批判を浴びていることは、各種報道の通りです。それに対して、謝罪と取り下げを求める署名活動を行った山本和奈さん(国際基督教大学4年生)ら4人が、1月14日、編集部に来訪されました。
その会談の概要を、以下にご報告します。
※追記:週刊SPA!1月29日号(22日発売)「今週の顔」でも、会談の内容と有識者(雨宮処凛さん、小川たまかさん)のコメントを掲載しました。
山本さん「問題が起こると廃刊しろという声が出るのですが、それでは何も解決しません。SPA!は動物愛護など良い記事もありますし、私たちは廃刊を求めるわけではなくて、メディアが社会の中でどうあるべきかを考えるきっかけにしたいと思うのです。
まず、なぜこういった記事が出てしまったのか、記事制作の経緯を教えてください」
犬飼編集長「編集会議で現場から提案された企画の中に『ギャラ飲みの実態』についての企画があり、編集長である私が採用しました。
取材を進める中で、ギャラ飲みマッチングアプリの主宰者に取材し、その際に『“ガチ恋しやすい”または、“お持ち帰りしやすい”女子大ランキング』の作成を依頼。執筆過程で、副編集長・編集長の判断によって、ランキングや記事全体を、より扇情的な『ヤレる』という内容にしてしまいました。振り返ってみれば、編集長である私が、世間の耳目を引きたいためにより扇情的なものを求めていたことが、今回の事件の大きな要因であると思っています。
我々としては、性犯罪を助長するような意図は全くなかったのですが、誌面を作る過程でどんどん感覚がマヒしていってしまいました」
渡部局長「ギャラ飲みのように、社会で起きている事象を取り上げること自体は、意味がないとは思いません。ただ、今回の記事は『どうすればヤレるか』という視点に立ってしまったこと、個人の主観に基づいた根拠のない(ヤレる女子大)ランキングを掲載してしまったことは、あらためて問題があったと思っています。
ご批判はもっともですし、新しい編集方針を打ち出していかなければならないと、編集長とここ1週間ずっと話しています」
後藤さん「雑誌を売らなければならない、というのはわかるのですが…私たちが考える本題は、『性的同意』をどう考えるか、女性をモノ扱いしていないか、といったことです。
今回、私たちが批判をしたことについて、『何を批判されたのか?』と感じていらっしゃいますか?それをご理解頂けてるかどうか」
犬飼編集長「これは語弊があるかもしれませんが、我々、女性のことを、好き……なんですね。(一同苦笑) こんな大の大人が若い女性に言うのも何なのですが。女性が好きで親しくなりたい、モテたい、という前提がありながら、結果的には『女性をモノのように見る』視線があったことは間違いないと思うし、その点を深く反省しています」
後藤さん「今の言葉を聞けて、よかったと思います」
山本さん「このような記事を出版することで、批判を受けると思わなかったのでしょうか?ランキングで名前を出された大学に、もし自分や家族が通っていたら…と考えなかったのでしょうか?」
増田Web編集長「実は、SPA!編集部の女性編集者のなかには、今回の特集掲載後に『ひどいね…』『読んでいてつらい』という声もありました。私もひどいと思います。ですが、出版される前にその声を吸い上げる仕組みになっていなかった。
弊誌編集部は声を挙げにくいわけではないのですが、現場編集者ー副編集長ー編集長という縦系列で企画が進んでいくので、周りは途中段階であまり内容がわからないのです。
また、SPA!も含めて男性週刊誌の性的記事がどんどん過激化していく中で、見るに堪えないと思いつつ、私も感覚がマヒしていたと思います」
続いて、山本さんたちが本題だと考える「性的合意」について、意見がかわされました。
後藤さん「『性的合意』はとても大切だと思っています。例えば、お酒を飲まして酩酊させてやったら、同意ではない、強制わいせつ・レイプですよね。私の周りでも、酒飲まされてレイプされたなんていくらでも聞く話なんです。
そんななかで、“こうすればギャラ飲みでヤレるんだ”というような記事を面白半分で作られると、すごく恐怖感を持つんです」
山本さん「読んでる側からしたら、『ギャラ飲みに来た女の子はヤレる』と感じてしまいますよね。
SPA!のこの記事だけでなくて、日本社会には『男性がおごれば、女性はセックスをOKしたも同然』のような感覚があって、これは性犯罪につながるんです。だから『ギャラ飲み』や『おごったこと』はセックスの同意ではない、ということを伝えたくて」
増田Web編集長「レイプ告発をした伊藤詩織さんを、週刊SPA!や女子SPA!でインタビューしたことがあるのですが…男性と2人で飲んで泥酔した伊藤さんのほうが悪いなどとバッシングした人がいましたよね。でも、それは全然、性的合意ではない」
後藤さん「『ノー』と言えば拒否、というより『イエス』と言うのが性的合意だ、というのがグローバルスタンダードになっているんです。『嫌だ』って言えなかった場合もありますから。でも、日本では上の世代ほど、いちいち言葉でそんな確認?という感覚ですよね」
山本さんからは、SPA!でも性的合意についてきちんと取り上げてほしいと要望があり、実現したく思います。
最後に、再発防止のためのプロセスについて。
今日の話を編集部員に必ずフィードバックする、編集方針をどう変えていくか編集部内で討議をする、編集方針を決めてステイトメントを出したい――などを、犬飼・渡部が述べました。
また、週刊SPA!誌上で、山本さんたちをインタビューすることを依頼し、快諾頂きました。
SPA!における今後の「性的記事」についても話が及びました。
犬飼編集長「僕らの中にも迷いがあって、たとえばセックスマニュアル的なものは、女性をモノ扱いしているのかどうか……」
後藤さん「性的に女性をモノ化するというのと、本人が主体的に『こういうセックスがいい』というのは全然違うと思うんですよ。男性が『こいつはエロい女だ~』とか勝手に言うのと、女性が『私はこういうセックスが好きだ』と言うのは違います」
山本さん「まず、日本ではセックスがタブーすぎることに問題があると思います。だから性教育も全然です。男女が同意をした上で、セックスするのは何も間違っていないです。むしろいいことだと思います」
ここから、まさかの展開で、彼女たちからセクシュアルな記事についてのアイデアが次々と提案されました。
4人とも海外在住経験があり、男女が性を主体的に語るカルチャーに親しんできたそう。英語交じりで性についてオープンに語る4人に、SPA!編集部も触発されました。
「いくらでもアイデアがありますから、協力しますよ!」とのことで、今後、週刊SPA!やWebサイト日刊SPA!・女子SPA!などで実現したいと思います。
約2時間に及んだ会談は、このように実りの多いものでした。当該記事で傷ついた多くの方に改めてお詫びすると共に、週刊SPA!を再構築していく所存です。 <文/日刊SPA!取材班 撮影/山川修一>
まず、当該記事で実名をあげてしまった5大学の関係者の方々や、傷つかれた多くの女性に、お詫びを申し上げます。
山本さんらは、「謝罪や廃刊を求めるのでなく、原因究明のための対話を求める」とのこと。週刊SPA!編集部としては、あの記事には問題があり批判を受けるのは当然、という認識で話し合いに臨みました。
<出席者>
●山本和奈さん、高橋亜咲さん、辻岡涼さん(いずれも国際基督教大学4年生)、NPO法人「ヒューマニティー」スタッフの後藤稚菜さん
●SPA!編集部側:犬飼孝司編集長、渡部超局長、石井智副編集長、増田結香(Webサイト日刊SPA!・女子SPA!編集長)
※煩雑さを避けるため、先方の発言は山本さんと後藤さんに集約致します。
なぜこの記事が出てしまったのか――経緯の説明
「女性をモノのように見る視点」について
本題は「性的合意」
再発防止のプロセスや、今後について
ハッシュタグ