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ジャパニーズウイスキー躍進の秘密がつまった1本30万円のレアボトルとは?

 国産ウイスキーはハイボールブームや朝ドラ『マッサン』のヒットなどで需要が拡大する一方、世界的な品評会で相次いで賞に輝くなど国際的な評価も獲得。取り巻く状況はこの10年あまりで激変した。年代物や小ロットの限定商品には定価の何倍、何十倍の値で取引されるものも登場。インバウンドの爆買いなども追い風となり、国内ウイスキー市場はかつてない盛り上がりを見せている。  そんな「ジャパニーズウイスキー」ブームを牽引しているのが、『マッサン』のモデルであり、国産ウイスキーの父と呼ばれる竹鶴政孝が創業したニッカウヰスキーだ。自身が留学したウイスキーの聖地・スコットランドと似た気候・風土であると創業の地に選んだ北海道・余市。同じくウイスキー造りに適した土地として蒸留所が設立された仙台・宮城峡には、観光名所として今やマニアのみならず多くの人が訪れている。

JR仙台駅から蒸留所最寄の作並駅までは30分程度。週末には作並駅から蒸留所直通のシャトルバスも運行されている

 余市蒸留所がニッカウヰスキーの原点であるとすれば、宮城峡蒸留所はその伝統を守りながら、国産ウイスキーの品質をより高いレベルに飛躍させるために造られたともいえる。  竹鶴政孝がニッカウヰスキー第2の蒸溜所・宮城峡を設立したのは、余市蒸留所とは異なる風味の原酒を造りたかったからだ。スコットランドであれば、100あまり存在する蒸留所間で原酒をトレードする文化があり、様々なブレンドが可能だが、蒸留所そのものが少ない日本では難しい。そのため、余市とは異なる気候の土地に新しい蒸留所を造る必要があった。竹鶴は風味の異なる原酒がブレンドに幅や奥行きを与え、それこそが世界に負けないウイスキー造りに欠かせないと考えていたのだ。

余市とは異なる「蒸気間接蒸溜方式」を採用。スチームを使い、時間をかけて蒸溜する。ポットスチル(蒸留器)も余市のものとは異なり、胴体部分に丸い膨らみのある「バルジ型」を採用した。蒸留方法やポットスチルの形状により原酒の味わいは変化するという

機械化された部分もあるが、多くの工程は今も竹鶴がスコットランドで学んだ伝統的な製法が守られている

世界的にも珍しくなった伝統的な製法によって生み出された貴重な原酒。世界中から愛されるゆえに原酒が不足してしまうという悩みも

1本30万円のウイスキーに込められた思い

「ジャパニーズウイスキー」がいかに世界の5大産地(スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本)の一つに数えられるようになったのか? 宮城峡を訪れれば、その秘密を肌で感じることができる。他にも導入当時から旧式で世界的にも珍しいカフェ式連続蒸留機を現役で稼働させるなど、国産ウイスキーの歴史に大きな足跡を残してきた宮城峡蒸留所。そんな蒸留所から開業50年を記念して造られた限定ウイスキー「シングルモルト宮城峡 リミテッドエディション2019」が登場する。

「シングルモルト宮城峡 リミテッドエディション2019」(右)と「シングルモルト余市 リミテッドエディション2019」が宮城峡開設50周年を記念してリリースされる

 そのコンセプトはまさに宮城峡50年の歴史を1本のウイスキーを通して振り返るというもの。開設から10年代ごとの異なる原酒を5種類をブレンドしたという贅沢な1本だ(ちなみに余市蒸留所の原酒で造られた同じコンセプトの商品「シングルモルト余市 リミテッドエディション2019」もあり)。価格はそれぞれ1本30万円だが、その来歴や希少さを考えれば値段以上の価値があるかもしれない。飲食店を中心に流通するので、もし幸運にも巡り合ったら、国産ウイスキーの歴史に思いを馳せながら、唯一無二の味わいに酔いしれたいところだ。 <取材・文/日刊SPA!編集部 撮影/難波雄史> 提供:アサヒビール株式会社
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