実家に寄生する“子供部屋おじさん”の実態…家族が悲痛の叫び
ここ最近、ネット界隈を騒がせている「子供部屋おじさん」なるキーワード。
子供部屋おじさんとは、実家から出ることなく、そのまま子供部屋に住み続けて働いたり、もしくは無職だったり……。要するに、実家に寄生している中高年男性のことを指すらしい。シンガーソングライターの岡崎体育もツイッターで「俺やんけ」とつぶやき、話題となっている。今回は、そんな子ども部屋おじさんの実態に迫った。
自分が前述の子供部屋おじさんの基準を満たしていることに気付き、やや自嘲気味に話すのは独身サラリーマン男性の竹内さん(仮名・38歳)だ。
「今年で39になりますが、未婚で千葉県内の実家暮らし。小学校高学年時代に与えられた子供部屋に今も暮らしていて、学習机も、上部の棚部分を取り払ってはいるものの、未だに使っています。“子供部屋おじさん”なんて言われて初めて気が付きましたが、確かに惨めです」(竹内さん)
しかし竹内さん、子供部屋おじさんではあるものの、実は大手エネルギー系企業に務めるエリートサラリーマン。千葉の県立御三家といわれる県立東葛飾高校を卒業後、東京外国語大学に進学。社会人になってからは、エジプト、南アフリカ、サウジアラビア、インドなどに計15年も駐在。帰国後は社内でも「出世コース」といわれる部署に所属し、現在は部長代理のポジションまで上り詰めたが、結婚する気も、できる気配もない。
親も高齢で間も無く介護が必要になるだろうし、今さら家を出ていく必要がない、という事情があるらしい。
このような「止むに止まれぬ」という人もいれば、ネット上では嘲笑の的になっている子供部屋おじさんの実態は笑えない。都内のWebコンテンツ制作会社に勤める西宮さん(仮名・30代後半)が声を潜める。
「私の兄は高校卒業後に実家を出て、警察官になりました。昔から『警察24時』に憧れていたようです。家族や親族、みんなが『すごいね』って喜んだんです。派手な性格ではなかったので、そのまま平和な人生を過ごすのかと思っていたら……5年後にはまさかの退職。もともと人づきあいが苦手で、飲み会も苦手。外食も滅多にせず、休日は家にいた。だから、警察の体育会系なノリが合わなかったのでしょう。辞めて実家に戻ってきました。そこからですね、兄の人生が狂ったのは。
外では相変わらずおとなしいのですが、家の中ではワガママ放題。高齢の親に脂っこい肉料理ばかりを要求して困らせる。外に出掛けても必ず夕飯の時間には戻ってきますね。無論、今も子供部屋に住み続けていて、部屋には萌え系フィギュア、アニメのポスターがベタベタ貼ってあり、帰宅後や休日は閉じこもってネトゲばかりしているようです」(西宮さん)
元警察という経歴から、再就職には困らなかったという西宮さんの兄。しかし、夢だった警察という職業を諦めてからは、どの仕事もうまくいかなかった。地元の中堅企業を中心に転職を繰り返したが、気がつけばもう40代。いくら元警官とはいえ、そろそろ再就職も厳しくなってきた。親もいつ介護が必要になってもおかしくない。西宮さんは「子供部屋おじさん」というキーワードを見るたびに、気が重くなる。
「最近は年齢のせいか、親もすっかり弱ってきて。もしも重い病気になったり、介護が必要になったりしたら、兄は頼りにならない。そのときは私が実家の近くに引っ越すなどしなければならないでしょう。ただ、子供部屋に住み続ける兄はもっと心配。40歳を過ぎても親のスネをかじって生きているのですから。果たして、いつ自立できるのか。いや、もう無理なのかもしれませんね。なぜ、しなくていい心配をしなければならないのか。ネット上では笑いの対象になっていますが、身近な者にとってみれば笑えませんよ」(同上)
さて、ここまでは実家に寄生する「子供部屋おじさん」の実態だったが、寄生とはいえ、仕事はするし、月々いくらかは実家にお金も入れていた。本当にヤバイのは、まさにすさまじい勢いで実家や関係者の精気を吸い取るような子供部屋おじさんの存在だ。
愛知県内に住む丸井さん(仮名・70代)が悲壮感たっぷりに訴える。
「うちの長男は、平たくいえば“引きこもり”なんでしょうけど、子供部屋から出ないというよりは、ほとんど家から出ない。極端に対人関係を嫌い、そのくせ家族には横柄。大学を中退して20年以上、ひとつの仕事に就いたこともありません。注意をすれば、部屋から1週間も出てこなくなり、深夜から明け方にかけて、変なアニメの主題歌を大音量で流す。食事に関しても気に入らないメニューであれば怒り出し、部屋の掃除も母親に任せきりですね」(丸井さん)
そんな長男に家族はあきれ果て、崩壊寸前だという。
「弟と妹は結婚して家を出ているのですが、こういう兄がいるからと、もう10年以上うちに帰ってきてはいません。なんというか、小学生や中学生のままなんです……。いつかは更生してくれるはずと願い、気がつけばもう息子も50才手前。我々の年金支給日には小遣いをせびってくるし、私らが死ぬときは長男も道連れにしようかと、妻と真剣に話し合ったこともありますよ」(同上)
「子供部屋おじさん」といっても様々なパターンがあるようだが、子供部屋に住み続けているというよりは、性格や生活スタイルが子供のままおじさんになってしまった人々、といったほうがしっくりくるのかもしれない。<取材・文/山口準>新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
身内は笑えない「子供部屋おじさん」の実態/竹内さんのケース
家族は崩壊寸前/丸井さんのケース
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