DV妻の暴力に怯える夫。それでも離婚しないのは「妻が好きだから」
「妻がかっとなって投げたボールが食器棚にあたって、ガラスの破片が飛んできたんです。死ぬかと思った」と当時を振り返るのは、牧野壮一さん(仮名・45歳)。柔和な顔つきで、一見「気弱」とも思える風貌だ。
「妻とは8年前に知人の紹介で知り合って結婚。子供がデキて数年後に、共稼ぎをするようになりました。税務署の事務職である私は9時から17時まで働いて帰宅するのですが、アフィリエイターの妻は勉強会といっては毎日外出し、朝方の4時5時に帰宅するような生活です。きっと、連日飲み歩いているのでしょう」
牧野さんの年収は400万円、一方5歳年下の妻はアフィリエイターなどネット稼業で月収40万円ほど稼いでいる。単純計算で、妻の方が牧野さんより年収が良いことになる。アフィリエイトなどで個人が月40万円稼ぐには、相当にガツガツと、違法スレスレのことをしないと難しいだろう。それができる妻は、かなり強烈なキャラクターだと推測される。
「正直、収入はさほど変わらないんですよ。でも妻はことあるごとに『お前の稼ぎが悪い』と罵り、酷い時は胸を足蹴りされるんです。彼女はガタイが良く、男である僕でも威圧感を覚えるほどで。
その時も『子供の為にもっと稼げ』と言われ、言い返したんです。そうしたら、かっとなった妻がソフトボールを投げつけてきました。本気で投げたようで、食器棚にあたって破れたガラスが飛び散ったんです。私にソフトボールが直撃したら、どうなっていたか…」
妻は「当たらないように投げたつもりだったから、外れると思った。でも手元が狂ってしまったわ」と平然と言い放ってダイニングキッチンを出ていった。当然のように、夫の牧野さんが後片付けをしたそうだ。
それから舞野さんは「また妻がボールを投げたらどうしよう」「もっと過激なことをされたら…」とおののく日々が続いている。そんな状況で、彼はなぜ離婚という選択肢を取らないのだろうか。
「子供がまだ5歳で、片親になったら可哀想ですから…。僕がもっと稼げば妻も満足してくれるかもしれないので、バリバリ働いて彼女を納得させればいいかなと思ってます。あと、なんだかんだ妻が好きですし」
警察庁がまとめた全国のDV相談件数は右肩上がりで、平成29年の「配偶者からの暴力」相談は7万2455件にのぼるが、うち17.2%は「男性が被害者」である。
1992年から「離婚110番」を主宰する澁川良幸氏(離婚カウンセラー・夫婦問題アドバイザー)のところに、妻からのDVについての相談が数多く寄せられる。今回は、実際に澁川氏に来た相談を元に、知られざる「妻からのDV」事例を再現する。
収入が低いと罵られ
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