更新日:2023年03月28日 10:47
ライフ

「水とガムが主食」引きこもり13年の40代が“あの事件”で感じたこと

 今年5月、10年以上にわたって引きこもってきたとみられる51歳の男が、神奈川県川崎市の路上で小学生や保護者ら18人を次々と刺し、最後は自ら首を切って自殺(川崎殺傷事件)する事件が起きた。  さらに6月には元農林水産事務次官が、引きこもりと家庭内暴力を続ける44歳の息子を刺殺(元農水事務次官事件)するという、衝撃的な事件が相次いだ。 「引きこもっている人で事件を起こすのはレアケースで、安易に結びつけるべきでない」という専門家の指摘もある。一方で、引きこもり相談窓口には、事件後に家族からの相談が殺到しているという。  では実際に引きこもっている中年たちは、今、何を思うのか。その声を拾った。

世間の目の冷たさ、失恋が引き金になった

引きこもり中年

自殺をはかったこともあるという青島さん

 幼少期に両親が離婚し、母子家庭で育った青島正則さん(仮名・48歳)は、34年前の中学2年生のときに原因不明の下肢不随になった。  不運は続き、23歳の若さで脳梗塞を発症。母親が救急車を呼んで一命を取り留めるも、右半身の感覚麻痺が後遺症として残り、車椅子生活を余儀なくされることに。退院後に待っていたのは、世間の厳しい目だったという。 「事情を知りもせずに、とにかく“使えないやつ“という目で見られるのが嫌でしたね。職業訓練学校にも通いましたが、結局内職のような仕事しかなく、働く意欲はどんどんなくなりました」  しかしその後、リハビリ先の病院で知り合った9歳年上の美容師と交際に発展。婚約もして未来は明るいかに思えたが……。 「突然、『もう無理』と告げられたんです。『あなたの体のことを勉強したいから』と、障害者支援学校の教員免許まで取得してくれて、彼女は僕の生きる希望でした。でも、市の特別障害者手当と、母親の年金で生活する僕に引き留められるはずもなく、黙って頷くしかありませんでした」  失恋直後、自殺をはかったこともあるという。 「死のうと思って睡眠導入剤を30シート(約200錠)飲んでみましたが、何も起きませんでした」

川崎の事件は「八つ当たり」だと思った

 以降、通院以外に外出はせず、社会と断絶して今年で13年目だ。 「眠くなったら寝る生活です。起きているときはネットゲームをしていて、そのチャットコミュニティが唯一の交友関係。食事は水とガムが主食。だからか、大便は3週間に1回しか出ないです(笑)」  そんな青島さんは、かの事件をどのように受け止めているのか。 「当人の状況がわからないから何とも言えないけど、“川崎”のほうは八つ当たりに感じます。『自分だけ死にたくない。弱いやつを巻き添えにしてやれ』って。ただ、社会の冷たさみたいなものは自分も感じているし、もしそういうことで現状が改善されるなら、自分も何か行動に移したかもしれないなとも思いますね……」  当事者たちが抱える苦しみを、くみ取れるような施策が待たれる。 <取材・文/週刊SPA!編集部> ※週刊SPA!7月23日発売号「引きこもり中年の衝撃」特集より
週刊SPA!7/30号(7/23発売)

表紙の人/ MIYU

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