「あなたはお尻を触りましたか?」外国人バイトがクビになった悲しい理由
「あなたはお尻を触りましたか?」と翻訳アプリに打ち込んだ私はスマホを握りしめ、ベトナム人アルバイトのグエンくん(仮名・25歳)を呼んだ。こんなに嫌な仕事は社会人になってから初めてであった。コンビニ夜勤のバイト仲間のお尻を触った彼に対し、店長として事情聴取をしなければならなかったからだ。
少し前に外国人労働者受け入れ問題が浮上したことがあった。いまコンビニでは多くの外国人がアルバイトをしている。筆者が店長時代に外国人労働者受け入れに関し、最も課題だと感じたのは「文化」を理解することの難しさ。
人材不足だったことに加え、東京の中でも比較的不便な場所の店だったため、特に夜勤のアルバイトの確保には苦労したのだが、仮に外国籍の方が日本で働く場合、留学生であれば週28時間まで(長期休暇中は40時間まで)しか働くことが認められていない。
近年のコンビニはレジでの接客作業が複雑化しており、日本人でも覚えて対応するのが難しい。ましてや日本語を勉強中の外国人留学生にはハードルが高いという問題があった。しかし、夜勤であればほとんどレジ作業はなく、清掃や品出しなどが中心となるため、日本語が多少おぼつかなくても応募してくれたら喜んで受け入れていた。
そんなある夏の日、夜勤に応募して来てくれたベトナムからの留学生、グエンくんは本当に真面目な子だった。週28時間制限のため、夜勤には週3回しか入れない。しかし彼は学費を稼ぐために週3回入りたいと言ってくれた。
夜勤は人が足りていなかったので本当に助かった。日本語はカタコトでぎりぎりレベルだったけれど、やる気があったので採用した。しかしグエンくんが入って1か月も経たないうちに事件が起きた。夜勤の常連バイトのカマタさん(仮名・49歳)がこう騒ぎ出したのだ。
「あいつに尻を触られた! セクハラだ!」
ちなみにカマタさんは男性だ。そもそもカマタさんは外国人留学生の受け入れをあまり快く思っていないようだった。言葉の問題なのか、内向的な性格のせいなのか詳しいところまでは分からなかったが、初対面の時から目を合わせなかったことは覚えていた。
男同士とはいえ、相手が不快に思えばセクハラはセクハラとなるが……どういう状況だったのだろうか。
グエンくんは夜勤に入って最初の頃からカマタさんについて作業の説明や指示を受けていた。カマタさん曰く、入って1か月くらいしたある日、彼はじゃれるようにして腰やお尻を軽くタッチしてきた、と言うのだ。
「それってふざけてではなく?」
筆者が聞くと、目を血走らせてこう返す。
「ふざけてだったとしても俺は不愉快だ! あいつとは働きたくない! あいつがいるなら俺はやめる!」
どうやらカマタさんは本気で憤っているようだ。そこでグエンくんからも話を聞くことにした。しかしこの微妙に繊細な話は日本語で通じるのだろうか? 不安に思った私はベトナム語翻訳アプリをダウンロードし、「あなたはお尻を触りましたか?」と日本語で入力。
真面目なベトナム人留学生がバイト1か月目で起こした「事件」
「私の国、お尻、触る、仲良しの、しるし」
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インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):@KA_HO_MA
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