コロナで気付いた家族の大切さ。冷たい性格だった夫が…
新型コロナウイルスの影響で、人間の生き方が変わるのではないか――。
グローバル化に突き進んでいた世界中で今、こうした議論がなされている。我々にとって身近なところで言えば「テレワーク」などは代表的な事例だろう。“仕事をするためには会社に行かなければならない”という概念がすっかり覆されてしまった。もしかすると、会社に行くことなど、たいして重要ではなかったのかもしれない。このように、コロナをきっかけに“本当に大事なことが何なのか”見えてくることもある。生活において、いちばん近くでも「変わった」ものがあるはずだ。
「大手流通系企業に勤める夫は、平日の帰宅は絶対に23時過ぎ。休日は丸一日寝ているか、夕方頃に起きて子供と近場に出かけるぐらい。家族のこと、私のことなんてちっとも省みない人、そう思っていました」
東京都内の専業主婦の玉田麻美さん(仮名・30代)は、ほんの数か月前までは夫のことを完全な仕事人間、良き家庭人とは言えず、冷たい性格だと思っていた。
それが今年2月以降、夫は人が変わったように家庭のことを気にするようになったという。
「神妙な顔つきで『話がある』と言われた時にはギョッとしましたが、新型コロナウイルスで世の中は大変なことになる、と大真面目に語り始めたんです。テレビのニュースは見ていたものの、大げさな気がして……。ただ夫は、それから家族を省みていなかったわけではない、まずは十分な収入を家族のために得たいし、そのために働いていることを理解してほしい、なんて言ってきたんです」(玉田さん、以下同)
夫は会社に掛け合い、自身の配下チームをいち早くリモートワーク体制に移した。上司からは「大げさな」と反対されても、「健康や命より大事なものはない」と断行したのだという。玉田さんやまだ小さい子供にも、夫は次のように指示を出した。
「買い物などの外出は俺がやる、自宅にいてばかりでツラいかもしれないが許してほしい、と諭されました。すでにコロナによる死者も出ているという報道がなされており、夫は『自分が死ぬのは仕方がないが、お前や子供だけは守る』と、日中に仕事をして、合間に買い物に行ってくれました。
自宅にいる私たちを飽きさせまいと、家でもできる楽しい体操の動画を探してきてくれたり、ホットプレートを買ってきて焼肉をしてくれたり。別人のように思いましたが“家族のために”という思いが仕事に向かっていただけだったのだと、愛を感じるようになりました」
いつの時代も「家族のために身を粉にして仕事する夫」というのはなかなか理解されない。今回のような非常事態に陥り、家族のためにすべき最優先事項が、仕事ではなく、家族との触れ合いになっただけ。変わらぬ家族への愛が可視化されたようだと玉田さんは話す。
男性だけではない、女性でも同じような「変化」を遂げた人がいる。
「大手アパレル企業に務める妻は、ほぼ全ての家事を自営業の私に任せて、月のうち半分が出張というハードなスケージュールをこなしていました。寂しくないと言えば嘘になりますが、妻のやりたいことを精一杯応援する気持ちでした」
都内在住のインテリアデザイナー・福士裕太さん(仮名・40代)の妻(30代)も、緊急事態宣言をきっかけに生き方を変えたという。
「妻の会社は、ほぼ全店舗が休業に追い込まれ、妻の仕事が全くと言っていいほどなくなりました。妻は『私から仕事をとったら何も残らない』と大きなショックを受けていましたが、共にリモートワークをするようになって、子育てや家事を手伝ってくれるようになりました。ありがとうなんて、何年ぶりだかに言ってくれたりして(笑)」(福士さん)
仕事ができるのも、夫が家を守り、子供が元気に育っているからこそ。仕事も家族も、そのどれもが欠けてはならない。妻はそう気がついたのだ。「コロナのおかげで家族の絆が深まった」(福士さん)というような例はまだある。
たとえば、夫や妻……。
コロナをきっかけに夫(妻)が別人のように変わった
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新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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