会社が推進するDXチームに参加。休日返上で働いて人事評価はマイナスに
多くの企業や自治体などで業務効率化を図ろうと「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進する動きが活発となっている。コロナ禍の影響もあり、リモートワークやペーパーレスなどの取り組みが急速に進んだようにも見えるが、現場は大混乱。本当に「DX」のおかげで、喜んでいる人たちはいるだろうか?
東京都内の会社に勤める嶋崎章吾さん(仮名・40代)が、ため息混じりに証言する。
「社長自ら“DX宣言”の音頭を取っており、ある程度PCスキルのある私や、若手を中心にDXチームが出来たんです。リモートワークに移行する社員のために、ソフトのインストールをしてあげたり、セットアップのアドバイスをしたり、業務効率化に向けた勉強会、助言も行うということだったのです」(嶋崎さん、以下同)
若い社員を統率する立場だった嶋崎さん。志高く、外部の勉強会にも参加して他社のDX化成功事例などを学び、皆でやり遂げようと準備を進めていたが……。
「チームメンバーにひっきりなしに電話がかかってきて“かな入力ができなくなった”とか“パソコンがフリーズした”とか、まるでPCのカスタマーサポートみたいになっていて。しかも初歩的なトラブルばかり。
本当は『全てチャットで質問して欲しい』とお願いしていたのですが、課長職以上の中堅社員はお構いなし。これではITとは名ばかりの“雑務係”じゃないかと不満しかありません」
さらに、デジタル関連で新たに「チーム」が結成されたものの、全員が既存の所属部署との掛け持ち。本来の業務が「DX対応」のおかげで全く進まず、疲弊するばかりというのだ。
大阪府在住のメーカー勤務・佐々木温子さん(仮名・20代)も、会社で同様の憂き目に遭っている。
「DX化は必要だがカネはない、ということなんでしょう。各部署からPCに詳しそうな人間が集められ、DXチームが結成されましたが、ほとんど若手で『上司よりはPCに詳しい』というだけの人。まあ、私もそんな一人なんですが。改めて勉強をしないとわからないことだらけ。チームの上司からは無茶振りばかりされ、非常に時間がかかる。
そのおかげで本業の仕事が疎かになり、もともとの所属部署の上長からは怒られて……。結局、DXチームと所属部署の仕事を合わせた総量をだれも把握していないんです。チームメンバーのほとんどが、業務時間外や休日を割いてまでがんばった挙句、昨年度の人事評価がマイナスになったとも聞いています。こんなの単なる貧乏くじ」(佐々木さん、以下同)
なかには「社長や役員クラスに直訴してチーム離脱を図ろうとする若手もいた」という。当然、社内のDX化は全く進まない。しっかりとリソースをかけるべきなのだろうが、先立つ予算もなく、がんじがらめの状態が続いている。
DXの新部署が設立「本来の所属部署との掛け持ちで疲労困憊」
本来の仕事が疎かになり「人事評価がマイナスに」
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新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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