ニルヴァーナの赤ちゃんジャケットだけじゃない。次にコンプライアンスで消えるCD
ロックバンドNIRVANAのアルバム「Nevermind」。裸の赤ん坊が印象的なジャケットだが、これが性的搾取にあたるとして提訴された。音楽業界には、他にも近しい危うさを抱えるアルバムがあるのではないか。もしそうしたアルバムが裁判の末に発売禁止になるとしたら、名盤が闇に葬られるかもしれない。
今回は、ニューウェーブユニット「ロマンポルシェ。」やDJとしても活躍する掟ポルシェ氏に、そうした「危機的な名盤」を紹介いただき、音楽評論家のハシノ氏に解説を語ってもらった。
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まずは、NIRVANAのアルバム「Nevermind」について教えてください。
ハシノ 1991年リリースの2ndアルバムです。ハードロック・ヘヴィメタルが中心だったアメリカのロックシーンをグランジ一色に塗り替えたほどのインパクトでした。全世界で4000万枚以上売れたらしいですね。
掟 みんながあのアルバムによって金銭的な恩恵を受けているのに、「なんで俺だけチ●チ●まで見せたのに一銭ももらえないんだ」って話ですよね。
確かに、気持ちはわからなくはないですが……。
掟 でも提訴した彼自身、何度もあれと同じ構図で写真を撮ったりして、胸元に「Nevermind」ってタトゥーまで入れてるんですよ(笑)。いままでメチャメチャ乗っかって来たじゃねえかっていう。ただ、例えば野球場に行くと「スタジアム全員が俺のおチ●チ●を知ってる」と思うのが嫌だったと話をしていますね。
他にも似たような境遇になったアルバムはありますか?
掟 スコーピオンズの「ヴァージンキラー」。少女のヌードが出ているジャケットで、タイトルを暗喩するようなデザインでした。
ハシノ 西ドイツが誇るハードロックバンドですね。日本でも、昭和のロックファンの心は鷲掴みにされました。「恐怖の蠍団」などの原題を無視したおどろおどろしい邦題でも有名です。
掟 発売当初から物議を醸し、アメリカでは早々にメンバーの写真に差し変わりました。ニルヴァーナの件と違うのは、当事者ではなくて、世間が許さなかったというところですよね。ボーカルのクラウス・マイネがジャケットのモデルの少女が成人した後に会った時、「私にとってはいい思い出」だと言っていたと聞きます。
日本のクリエイションというバンドのアルバムにも、子供の性器が写っています。
ハシノ 内田裕也プロデュースの1stアルバムですね。往年のプロレスファンにはザ・ファンクスの入場テーマ曲としても有名です。
掟 発売当時はテレビでも裸の子供が出てくるシーンはよくありましたし、このジャケットも一度も問題視されたことはないと思います。ニルヴァーナの場合は「売れた」というのが大きいんですよ。
爆発的に売れて、何度も再発されているにもかかわらず「あの赤ちゃん」にだけはお金が入らない。彼が裁判の末に求めているのが、ジャケット写真の使用差し止めなのか、金銭的な和解なのかはわかりませんが、これによって意外なものまで将来的に「ダメ」になってくる可能性が出てきたのは事実です。
NIRVANAのアルバムが訴えられた
世間が許さなかったスコーピオンズの「ヴァージンキラー」
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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