エンタメ

日本社会は「出すぎた杭」を許さない?今も残る投資ジャーナル事件の風潮

文/椎名基樹

詐欺師呼ばわりで逮捕された中江滋樹の「投資ジャーナル事件」

 1970年代後半から、株式投資の世界で「兜町の風雲児」ともてはやされ、やがて「投資ジャーナル事件」で逮捕収監された中江滋樹を扱った、世界仰天ニュースが面白かった。VTRの内容も興味深かったし、何より「仰天ニュース」は再現VTRのクオリティーがいつも高くて立派だ。  投資ジャーナル事件は、中江の会社が保証金の10倍を融資すると謳い、580億円あまりを集めたことが詐欺行為に当たるとして立件された。中江滋樹は、無免許で融資し投資させた証券取引法違反は認めていたものの、自分が詐欺罪であるとは信じていなかった。しかし結果、詐欺罪として懲役6年の判決が下された。  ゲストのアナウンサーの吉川美代子は当時このニュースを報道したが「中江に儲けさしてもらった人はたくさんいたのに、損をした途端手のひらを返したように、中江滋樹は詐欺師呼ばわりされた」と話す人も周囲には多くいた。しかし、報道としては大悪人として扱われていたとコメント。  同じくゲストの経済評論家は、中江滋樹本人は詐欺とは思っていなかった、だから逃げも隠れもしていなかったしマスコミに顔を出し続けていた。兜町の風雲児ともてはやされている高揚感の中でいつの間にか詐欺に手を染めてしまったのではないか、と何だか曖昧なコメント。  近頃ベストセラーになっている厚切りジェイソンの株式投資の著作を読むと、証券会社がお勧めの銘柄で構成された「アクティブファンド」はほとんどの人が損をしてしまうという。投資は最終的には投資家の自由意志で行われており、損をしたからといって詐欺罪に問われるならば、証券会社は丸ごと詐欺罪になってしまう。

ひろゆき氏の発言が思い出される

 検察は584億円のうち18億円について詐欺罪に当たるとして懲役12年を求刑した。結果懲役8年の判決が下され、後に控訴して6年に減刑された。なんとも歯切れの悪い経緯で、落としどころが決められたような印象を受ける。  私はこの番組を見て、昨今のネットスターの2人のことを思い出した。1人はひろゆきだ。ひろゆきは、自身のYouTubeチャンネルで、日本経済の停滞の発端の1つにホリエモンの逮捕があると思っているとコメントしている。ホリエモンを逮捕する明確な罪状はなかった。しかしホリエモンは逮捕された。それを見て日本の起業家は、目立つと手を下されると知り萎縮した、という趣旨のことを発言していた。
次のページ
出る杭となったガーシーは打たれるのか
1
2
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina

記事一覧へ
おすすめ記事