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屋外の虫除けグッズ、どれを選ぶべき? 蚊取り線香を生んだKINCHOに聞いた

2022年6月6日、気象庁は関東甲信越が「梅雨入りしたとみられる」と発表。今年もいよいよ夏が近づいてきた。楽しいことの多いこの季節だが、どうしても悩まされるのが、蚊をはじめとする害虫の存在。そこで、虫除けの歴史から最新の虫除け事情に至る「虫除けの今昔」を、大手殺虫剤メーカーであるKINCHO(大日本除虫菊株式会社)に聞いた。

屋外の虫除けには伝統のアレ

蚊取り線香使用シーン

蚊取り線香

 空前のキャンプブームが続く昨今。屋外用の虫除けに興味を持つ方も多い。どの製品が良いのか、KINCHOの宣伝部課長小林裕一氏は次のように話す。 「”効力の有効範囲”で言えば、今でも蚊取り線香が一番ですね。蚊取り線香は火を使うので高温になることや、煙とともに風にのって薬剤が遠くまで拡がるんです」  様々な新商品が出る中、効果の範囲では伝統の蚊取り線香が王座を守り続けている事実は驚きだ。では、キャンプの際に蚊取り線香を効果的に使うにはどのようにすれば良いのだろう。 「まずは風上に置くことです。もっと言うと、テントを中心に対角線上に二つの蚊取り線香をおけば、どちらから風が吹いても効果が得られますね」  KINCHOをはじめフマキラーやアースなど、様々なメーカーが蚊取り線香を販売している。では、蚊取り線香はどこでどのように生まれたのか。 「蚊取り線香は、当社の創業者である上山英一郎が開発したものです。みかん農家に生まれた英一郎が、みかんを海外に輸出しようと考え、師であった福沢諭吉さんにアメリカの貿易商を紹介してもらったそうなんです。その貿易商が、翌年いろんな植物の種を送ってきて、その中に『除虫菊』の種があったんです。『除虫菊』の花の部分には殺虫効果があり、その粉末を当初はノミ取り粉として製品化しましたが、みかん農家の周辺は蚊が多く出るので、英一郎は『どうにか蚊を退治することに使えないか』と考えました」

蚊取り線香の誕生秘話

 除虫菊の粉末を「線香」という形にしたこと。さらには渦を巻いた独特な形となって完成に至るには、上山氏の意欲に加え、偶然も重なっていたという。 「除虫菊を蚊を退治することに利用できないか考える過程で、試しに火鉢に除虫菊の粉末をくべてみたら蚊に効果があったんです。でも夏の時期に火鉢は暑いですよね。これでは実用的ではないとさらに考えを巡らせていた英一郎ですが、ちょうどその頃、偶然線香屋と同宿だったことがあり、その事がきっかけで除虫菊の粉を線香に練りこむことを発案しました、それから試行錯誤を重ねてようやく1890年に初めて『蚊取り線香』が誕生しました。ただ、当初の蚊取り線香は仏壇線香と同様の棒状で、これでは數十分しか燃焼しないうえに、細いために効き目の範囲が狭かったんです。その改善策を考えている時、英一郎の妻が倉庫の中でトグロを巻いている蛇を見て、それをヒントに渦巻きにすることを思いついたそうなんですね」  偶然はもちろんだが、上山氏自身が常に蚊取り線香のことを考えていた意欲が完成に至らせたと言ってもいい逸話だ。では、あの鮮やかな緑色にも意味はあるのだろうか。 「蚊取り線香は、原料をそのまま作ると黄土色のようなものになります。これは諸説ありますが、蚊取り線香ができるまでの蚊除けはヨモギの葉を燃やしていたんですが、蚊が取れるイメージを当時の人々の訴求するために、ヨモギの葉の色に似せたと言うのがひとつ。また、夏の時期に涼しげに見えるように緑色にしたという説もあります」
上山英一郎氏

上山英一郎氏

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屋外向け虫除けの最新事情
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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