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「4630万円誤振込」の田口翔被告がSNSを開設。“有名になった素人”が稼げる時代の明暗

文/椎名基樹  

セルフモザイクを作り出した“無意識過剰”の男

田口翔氏

ヒカル「NextStage」Twitterアカウントより

 横目に映ったテレビ画面の中の、強風で長髪をなびかさせながら、警察署の前で深々と頭を下げて、マスコミに謝罪する男に目を奪われた。頭髪が顔を完全に被っていて、謝罪にしてはふざけすぎだ。 「無反省」をエクスキューズしつつ、一応ちゃんと謝罪する方法として、これほど合理的な方法もない。しかし彼は、世間に対して反抗的な態度を示しているわけではなく、偶然の強風のせいで、意味深長な変人に見えてしまっているだけである。そんなところも余計に笑けてくる。  この無意識過剰な天才コメディアンは誰なんだ? マスコミに向かって謝罪するのだから、どうやらタレントのようである。この男は一体何をしたんだ?  ロン毛のお笑い芸人なのかとも思ったが、そんな名前の芸人は思い当たらない。よくよく見てみると、山口県阿武町の給付金詐欺事件で逮捕された田口翔被告だとわかり、今度は声に出して笑ってしまった。なんであなたが謝罪会見を!? スターかっ!

田口翔被告の天然に備わった喜劇性

 世間にとってもこの謝罪はインパクト大だったようで、ネットでは顔に被った頭髪を指して「セルフモザイク」と、気が利いたツッコミが入った。  ワイドショーではタレントのユージが、「ある種持っている人に見えちゃう」とコメント。犯罪を犯した人間に「持っている」は不適切なのかもしれないが、ユージのコメントは私の気持ちを代弁してくれている。  私もこの謝罪会見の狙ってできない滑稽にただただ感心するばかりであった。いや、謝罪会見だけでなく、誤送金がされた時点で、何ともすっとこどっこいな奇跡が連続する数奇な運命だ。彼に天然で備わった喜劇性を感じざるを得ない。
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ユーチューバーヒカルが目指す「win win」な関係
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1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina

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