貧困とDVに苦しんだ「中卒社長」が、カンボジアに小学校を寄付するまで
「世界中の子供たちが安全に勉強できる環境を作りたい」との思いから、カンボジアで小学校建設や女性の就労支援などを行っている一般社団法人「Global Construction Union」(以下、GCU)の理事長の中村英俊氏。なぜ建設会社の一社長が社会貢献に目を向けるようになったのか。中村氏の壮絶な10代から現在に至るその軌跡を聞いた。
「自分のようなゴツイ男が社会貢献活動なんて、似合わないと思われるかもしれませんが……」
そんな言葉とともに笑顔を見せるのは、 2017年からスタートした建設会社の業界団体であるGCUの理事長・中村英俊氏。身長181センチ、体重102キロ。まるで格闘家のような風貌の中村氏だが、実はカンボジアでの子どもや女性への支援、ベトナムでの貧困層への寄付、国内の被災地支援など多数のボランティア事業を実施している。GCUは、現在400社の関連企業が加盟する団体だが、創立のきっかけのひとつは「建設業界をもっと働きやすい場所にしたかったから」と中村氏は振り返る。
「建設業界の市場規模は年間17兆~18兆円で企業数は約48万社ですが、売り上げは1億円未満の会社がその多くを占めていると言われています。小さい会社ほど大企業からの中抜きなどを受けやすく、元請会社が25~40%を抜く。さらに1次下請、2次下請が抜いていくので実際に作業する会社はとても厳しくなります。僕自身も下請けで受注していた頃は重複下請で大変な思いをしてきました。こうした理不尽な中抜きがなくなるように、横のつながりを増やして仕事を融通し合ったり、ノウハウを共有したりする建設会社のネットワークを作りたいと思ったんです」
業界の働き方の改善やネットワークの構築のほかに、中村氏がGCUを立ち上げた際の大きな動機は「社会貢献を行うこと」だ。
「今はSDGsや社会貢献が叫ばれていますが、建設会社1社だけでは、大きな貢献は難しいし、多くの会社は目の前の仕事が忙しくて手が回らない。でも、複数の建設会社が一緒に協力すれば、大きな支援につながるかもしれないと思いました。そこで、社会貢献を積極的に行う団体として、GCUを立ち上げたんです」
現在の環境をよりよくしたい。そんな強い意識を抱くようになったきっかけは、自身の幼少期に遡るという。関西で事業を営む裕福な両親のもと、長男として生まれた中村氏だが、父が脳溢血で意識不明になってから日常は一変した。
「父が突然倒れた結果、会社の資金繰りがうまくいかず、巨額な借金が残ってしまったんですね。1年後に父は回復したものの、以前のように会社運営はできなくなってしまったんです。それからは、毎日のように借金取りから逃げ回ることになって、合計で7回は転校しました。中学1年生からは、少しでも学費の足しにするために毎朝、新聞配達も手伝っていました」
建設業全体のイメージアップに貢献したい
貧困にあえいだ幼少期の実体験が原動力に
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