更新日:2023年05月19日 14:10
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アメリカと日本でこんなに違う子育て事情。日本のざんねんな「パパ育休」にガッカリする理由

 厚生労働省の発表(雇用均等基本調査)によれば、2021年の日本男性の育児休業取得率は13.97%という驚きの低さ。岸田政権が「異次元の少子化対策」でさまざまな支援策を打ち出す中、4月からは育児休業取得状況の公表の義務化も始まったが、従業員1000人を超える企業のみ対象など影響は限定的に過ぎず、議論を呼んでいる。
子育て事情

アメリカの気になる子育て事情。父親はどうしてる?

 20年前に日本を離れてアメリカで暮らし子育てをする筆者がガッカリしたのは、日本のパパたちの「とるだけ育休」だ。

アメリカでは男女ともに、ほぼ産休・育休なし!

子育て

アメリカでは日本と違って公的補助はほぼなく、家族にかかわる現金給付は対GDP比0.07%と、主要国ではダントツの低さ

 じつは、日本のように充実した公的育休制度は存在しない「育休後進国」のアメリカ。出産前後に年12週間の産休・育休を取得できる権利が男女ともに認められているが、それも企業規模次第で、雇用期間や労働時間など諸条件を満たす必要もある。企業は取得を理由に従業員を解雇できず、職場復帰は保障されるものの休暇中は無給となり、日本のように、国からの公的補助が出るということもない。  中小企業に勤めるなど産休・育休制度を利用できない人は全労働者のうち4割以上を占め、そのうち数百万人は無給休暇を取得する余裕がないというデータも。高額の出産費用となるため、普通分娩であれば出産予定日まで働き、産後は最短24時間で退院、体調が完全に戻らないうちに4人に1人の母親が産後2週間で職場復帰している厳しい現状がある。  その点、日本はどうだろう? 母親は国から産後8週間の産後休業が義務付けられ(希望すれば産後6週間に短縮可)、育児休業中は雇用保険から給付金が出る。父親も子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割して「産後パパ育休」を取得できるようになり、父母ともに育児休業を取得する場合、子が1歳2か月に達するまでの間に1年までの休業も可。育児休業給付金や保険料免除もあり、手取りで休業前の最大約8割と、収入もほぼ変わらず。  アメリカと違い、日本には公費負担による手厚い支援があるうえ、「異次元の少子化対策」により「児童手当など経済的支援の強化」、「学童保育や病児保育、産後ケアなどの支援拡充」など、さらなる金銭面でのサポートが見込まれている。日本の育児環境の、なんと恵まれていることか。

パパ育休は「迷惑」と言い切る日本のママたちの声

 現在、国が後押しする「パパ育休」が話題だ。アメリカから見るとうらやましい限りだが、当事者はどう考えているのだろう。育休取得を宣言する夫がいる一方で、一部の妻は「ただの迷惑」「邪魔なだけ」「なんとか阻止したい」と、拒否反応を示す。  岸田政権は男性の育児休業の取得率の目標を2025年度に50%、30年度に85%に引き上げることを明らかにしている。しかし、コネヒト株式会社による、夫が育休を取った妻を対象にした2022年のインターネット調査では日本の男性の3人に1人が「とるだけ育休」という結果に。育休取得率100%の企業でも取得日がわずか数日と、「質」が伴っていないとの指摘がある。しかも、育休を取った男性の44.5%は、家事・育児関連時間が3時間以下との調査結果まで出ている。つまり、通常は職場で1日9時間労働なら、6時間の「バケーション」をもらっているというわけだ。  2023年1月の内閣官房資料「こども・子育ての現状と若者・子育て当事者の声・意識(女性の継続就業・出産と男性の家事・育児時間の関係)」によれば、日本の夫(6歳未満の子どもを持つ場合)の家事・育児関連時間は2時間にも届かず、国際的にも低水準。対して、妻は約7時間半に及ぶ。  日本は残業が多いから? 長時間労働者の割合は日本15%、アメリカ14.2%と、そこまで大きく変わらない。にもかかわらず、アメリカの家事・育児関連時間は夫が3時間7分、妻が5時間48分と、日本と比べて差が小さく、長時間労働者の少ない北欧にも引けを取らない。  では、なぜ日本の男性は育児をしないのか? ここで男女格差を可視化した「ジェンダーギャップ指数」116位の日本の問題点が見えてくる。日本では「何もしない夫」の存在により、働く妻の約半分が出産によりキャリアを断念しているという数字もある。その「何もしない夫」は、育休中であっても家でゲームするか外で飲み歩くかで、ただでさえ忙しい育児に並行して夫の世話までしなければならない妻はいら立ちを覚えている。そして、「パパ育休は不要」という結論に至る。
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アメリカでの子育ては「夫婦の連携プレー」がカギ
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アメリカ・シアトル在住。エディター歴20年以上。現地の日系タウン誌編集長職に10年以上。日米のメディアでライフスタイル、トレンド、アート、グルメ、カルチャー、旅、観光、歴史、バイリンガル育児、インタビュー、コミック/イラストエッセイなど、多数の記事を執筆・寄稿する傍ら、米企業ウェブサイトを中心に翻訳・コピーライティング業にも従事。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員

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