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「頑張りすぎて逆に疲れそう」アメリカのキャンパーから見た日本のキャンプブーム

 まだまだ続く日本のキャンプブーム。今年は行動制限もほぼなくなり、キャンプ場の人出はさらに増えそう。一方で、ブームに乗ってみたものの、「キャンプ疲れ」により脱落したという人も少なくないようだ。
公営キャンプ場

アメリカ西海岸の公営キャンプ場。川や湖、海など水辺にあることが多く、子どもたちの水遊びにもってこい

 20年前に日本を離れ、アウトドアが盛んなアメリカ西海岸シアトルの地で、毎年のように子連れキャンプに出かける筆者が、アメリカ流「疲れない」キャンプ旅を紹介する。

「至れり尽くせり」衝撃だった日本のキャンプ場体験

キャンプ場

キャンプ場の周辺には自然を満喫できるスポットがたくさん。日中、ハイキングや散策をするのも楽しみだ

 日本ではアウトドアにまったくと言って良いほど縁のない生活を送っていたが、カナダと国境を接するシアトルは、人気アウトドア・ブランドのREIやマナスタッシュ、エディー・バウアー誕生の地であり、大自然の宝庫。当然、キャンプも盛んで、だんだんと魅力にハマっていった。  そんなアメリカでキャンプ・デビューを果たした筆者にとって、日本人のキャンプ事情は、それこそ未知の世界だった。  数年前、初めて日本で友人とキャンプ体験をしたのは北海道の牧場だ。目の前に山々の絶景が広がるキャビンに泊まり、食事は別料金の豪華ジンギスカンセットが提供された。そのあと、別の友人と長野県の温泉近くのキャンプ場に泊まったことも。夜はしっかりお風呂にまで入った。  至れり尽くせり……。行ったところがたまたまそうだっただけかもしれないが、私の中で日本のキャンプ場はそんな印象だ。シェラフ(寝袋)など必要なギアやキャンプ用品のほとんどをその場でレンタルでき、共用の大きな調理場や洗い場、温水洗浄便座付きのトイレ、風呂などが備わる。

日本人キャンパーのおしゃれ感に驚く

 キャンプ場を見渡せば、おしゃれキャンパーたちの装備&キャンプ用品もまた目にまぶしい。デザインからして高級感いっぱいのテントやタープ、ランタン、チェア……。ガーランドライトやフラッグなど、テントのデコレーションも、カタログからそのまま飛び出してきたようで、こだわり具合がうかがい知れる。おそらく人気の海外ブランド品なのであろう。調理道具も、スキレットにダッチオーブンと、次から次へと出てくる。  この日本人のキャンプ熱は2010年代半ばから始まり、第2次ブームと呼ばれ、90年代の第1次ブームとは差別化されているらしい。2018年ごろにはアニメやテレビ番組の影響から、ひとりで楽しむソロ派が増え、装備の不要なグランピングの登場で女性やアウトドア初心者の若者も多く取り込むことに。コロナ禍を機に「密」を避けながら家族で過ごすファミリー・キャンプが注目され、より人気が加速した。「オートキャンプ白書2022」によれば、2021年のオートキャンプ参加人口は750万人で、前年比23%増という。  観光気分で友人たちと楽しいひと時を過ごせた日本でのキャンプ体験だったが、逆カルチャーショックを味わった。そして、気になったのはキャンプ場利用のコストだ。そこそこのホテル並みの価格……。アメニティーや朝食付き、冷房の利いた部屋で、ふかふかの布団に入って眠れるビジネスホテルに泊まるほうが、断然コスパは良い。  本場アメリカで毎夏のキャンプ歴10年以上の身としては、「もっと、シンプルでいいのでは?」とも思う。
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アメリカでもコロナ禍を機にキャンプ人気が拡大!
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アメリカ・シアトル在住。エディター歴20年以上。現地の日系タウン誌編集長職に10年以上。日米のメディアでライフスタイル、トレンド、アート、グルメ、カルチャー、旅、観光、歴史、バイリンガル育児、インタビュー、コミック/イラストエッセイなど、多数の記事を執筆・寄稿する傍ら、米企業ウェブサイトを中心に翻訳・コピーライティング業にも従事。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員

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