“読んでみないと分からない”からこそ…人気デザイナーに聞く、「漫画の表紙」ができるまで
「ジャケ買い」や「パケ買い」、「表紙買い」という言葉が浸透して久しい。それはひとえに、パッケージや表紙が購入する動機として大きな要素を占めているからだろう。当然ながらどんな商品であっても意図をもってデザイナーによって作られており、漫画の表紙もその例に漏れない。
さて、日々漫画の単行本が生み出されているなかで、多くの読者の心を掴んで離さないデザイン会社が「株式会社円と球」である。「このマンガがすごい!2022」オンナ編第1位を獲得した『海が走るエンドロール』や、文化庁メディア芸術祭 第25回 マンガ部門 新人賞を獲得した『転がる姉弟』など数多くの人気作の装丁を担当する同社。今回は、代表を務める白川さんに、読者の心を掴むデザインについて話を伺う。
――まずは、漫画の表紙ができるまでの流れについて教えてください。
白川:作品にもよるのですが、本文の内容を読んで作ります。作家さんにイラストのラフをいくつか出してもらい、「どれがいいか、もっと良くするにはどうしたらいいか」などを話し合うパターンが多いですね。その後、デザインのイメージを編集さんと漫画家さんとで決めていく方法が多いです。
――デザインを作り上げていく過程の中で、漫画家・編集者以外に話す人はいるのですか?
白川:基本的には3者が多いです。「作家さんがやりたいこと」と「編集さんがやりたいこと」が嚙み合ってなかったりする場合もあるので、このくらいの規模が一番きれいにまとまるのかなと思います。
――普段どのようなものを参考にしているのか気になりますが、いかがでしょうか。
白川:デザインだったりアートだったり、街の広告だったりバラバラです。ジャンルは特定せず色々なものを参考にしているというか、影響を受けていると思います。
――作品を読んで浮かんだイメージを装丁に落とし込む作業はどのように行われているのですか?
白川:第一に、その作品の光る部分を読者さんにどうやって伝えたらいいか、どういった表現が適切なのかを考えます。その際に大事だと思うのは、簡単に説明すると明るい話・暗い話・面白い話、のような方向性を基本的に抑えながら、その作品を好きな層はどういう人なのかを想像することが多いです。ライト層なのか、ある程度漫画を読んできた層なのか……そういった深度のようなものは意識しています。
――作品を作る際に、紙の段階から選んでいるのですか?
白川:出版元によって異なりますが選べることが多いです。こちらからいくつかご提案して進めることが多いですが、デザインに合った紙を選ばせていただいています。
――紙の書籍と電子書籍でのデザインに違いはあるのですか?
白川:電子書籍の場合、スマホでサムネイルが横に三つとか並ぶとすごく小さくなってしまうので、なるべく「文字が大きい」「イラストが大きい」「色を目立たせる」という、アイコン的考え方になっていきます。『光のメゾン』では、デジタル用に紙コミックスと異なるデザインにしており、先ほど挙げた考え方に基づいていると思います。
「漫画の表紙」はどのようにして作られるのか
「紙と電子」でデザインを変えている
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