仕事

「職場の仕切りたがり屋」のモラハラに苦悩する29歳清掃員…精神科医が教える“身の守り方”

 中堅企業に籍を置き、副業をはじめた。ビルの清掃の仕事で、毎月4万~6万円の収入となる。生活に多少の余裕が出てきたが、そこには自らの仕事のやり方をしつこく押し付けるパート社員がいた。精神的に滅入るほどにくどく、強引に迫るものだった。あなたが、このモラハラの被害を受ける社員ならばどうするかー。  今回は実際に起きた事例をもとに、職場で起きた問題への対処法について考えたい。本記事の前半で具体的な事例を、後半で精神科医の解決策を掲載する。事例は筆者が取材し、特定できないように加工したものであることをあらかじめ断っておきたい。

写真はイメージです

事例 副業バイトで働く清掃会社にいる厄介な先輩パート

 関西の中堅企業(社員数700人)で営業マンとして働く吉本祐樹(仮名、29歳)は、1年前から副業として清掃会社(社員数50人)に勤務し、オフィスビルのゴミ回収をする。  2~5階までのテナントに入る企業60社の室内のごみを回収する仕事だ。週3日勤務で、1回につき、午後6時から10時までの計4時間。時給は1400円。  正社員(チーフ)は30代前半の男性1人で、パート社員(アルバイト)が7人。7人の平均年齢は、30代後半。内訳は学生が3人、4人が会社員と主婦。 吉本は、会社員のうちの1人。賃金は、毎月平均で6万円。吉本は、半年以上前からモラハラを受け続けている。相手は、パート社員の女性の中田みどり(仮名、28歳)。中田は、2年前から週4日働く。同じく、副業の立場だ。  自分の仕事の進め方をパート社員全員に強引に押し付けるのが、1つの特徴だ。仕事の進め方は本来はチーフが決めるのだが、なぜか、中田が仕切っている。

モラハラのターゲットに

 押し付ける内容の中には、明らかに時間がかかったり、トラブルが起きそうなことが少なくない。だが、必ず、自分のやり方に従わせようとする。チーフや吉本ら数人がそれを「そのやり方は問題がある」と指摘すると、大きな声を出し、感情的になる。  自分のやり方に従っているか否かを確認するために、パート社員の担当したフロアを警備員のように執ように見回る。そんな権限はパート社員にはないはずだが、自分に従わせようとする。そして、できていないことを1日の終わりのミーティングで10分ほどかけて皆の前で指摘する。  できていないことは、あえて取り上げるまでもないレベルが多い。それでも興奮しながら、叱りつける。該当するパート社員がお詫びをするまで、止めない。必ず、自分に従わせる。さらには、職場の全員が読むノートにも書いて回覧をさせ、サインまでさせる。そんな権限はないのだが、自分のやり方に執ようにこだわる。  チーフは不満を持ちながらも、中田に強く言えない。何かをいえば、激しく反論をされる。中田に辞められたら、職場は当分機能しない。採用試験を行っても、エントリーする人は極めて少ない。  中田はチーフの上司である部長にもLINEを通じて、吉本らパート社員の問題点を頻繁に指摘する。時には、午前4時までかけて何本もメッセージを書く。部長は、それを鵜呑みにする。チーフは、部長が中田を信じ切っていることに不満を持つが、何も言えない。  中田自身もトラブルを繰り返している。他人に厳しく、自分には甘い。中田が今、モラハラを特に徹底させているのが、反抗的な表情をする吉本だ。  吉本は、つくづく嫌気がさしている。
次のページ
職場でのモラハラに該当するか?
1
2
3
4
ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ