函館のラブホテル社長に聞いた、“困った忘れ物”「洗面所に大量のうろこが」観光地ならではのケースも
北海道函館市の「ホテル水色の詩(みずいろのうた)」を経営する有限会社工藤観光の代表取締役社長の工藤丈さん(47歳)に、ラブホテルの忘れ物についてお話を伺った。
工藤さんはラブホテルの生き残り競争が激しい地区で少子化やコロナウィルス感染拡大の影響を受けながらも14年、経営を続けている。
忘れ物は、利用者であるお客さんが部屋を出た後に、社員とパートが4人で1つのチームをつくり、その部屋を掃除している時に見つかることがほとんどだ。
ホテル水色の詩では忘れ物は、バックオフィスの金庫に3か月間は必ず保管する。値段が高いのは数日以内に引き取りに来るケースが多い。引き取りに来ない物は3か月が過ぎた時点で破棄している。
連絡先がわかったとしても、ホテル側から連絡は一切しない。プライバシーを守るためだ。社員やパートが自分の所有物にしたり、家に持ち帰ることは禁じている。
去年、工藤さんがとても驚いた忘れ物が車だ。ほとんどのお客さんが車でホテルに来て、敷地内の駐車場に止めて、室内での利用後に車で帰る。
その日は数時間以上、1台の車が停められたままだった。工藤さんは不審に思い、警察に伝えた。警察は車番から持ち主の連絡先を教え、「本人と話し合ってほしい」と言った。
その時点では、事件性がないと判断されたようだ。工藤さんが本人に電話をすると、男性が「ホテルを利用したのは間違いがない」と答えた。
「ご本人によると、男2人、女1人の3人で室内に入り、その後は車の持ち主である男性がタクシーに乗り、1人で帰ったようです。
部屋に残った男性と女性のうち、いずれかが車に乗り、持ち主である男性の家まで運んできてくれると思い込んでいたみたい。ところが、車が一向に来ないから困っていたと男性は私に話していました。
車の忘れ物はあまりにも意外であり、はじめての経験です。ちなみに、3人で入る場合は男2人、女1人のケースが多いですね」
下着は最も多い忘れ物の1つのようだ。目立つのが男性はトランクス、女性はショーツ。大半は布団か、シーツのところに丸まっているという。
「下着を脱いで裸になり、プレイ後、新しい下着を着た時に脱いだものをそのまま置き忘れてしまったのかなと思います。驚いたのはものすごく大きな水色のブラジャーで、サイズはたぶん、G、H、Iクラス。それ以前に、それ以降も見たことがない大きさでした。後日、男性がフロントに取りに来ましたのでお渡ししました」
意外なところでは、入れ歯を忘れる人もいる。70代と思える男性が退出直後に取りに来た。
お客さんの約1割は60代以上の高齢者で、男性が大半を占める。100円ショップで販売されている手頃な老眼鏡を忘れるケースも増えている。つえをつく男性も目立つが、つえは決して忘れないようだ。

テーブルをふく工藤さん
男2人、女1人の3人の意外な忘れ物

バックオフィスのモニターから駐車場を確認している
高齢者ならではの忘れ物が
ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
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