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函館のラブホテル社長が語る“ラブホ経営”の難しさ。「2日間部屋が使用できない」困った用途とは

 今回は、北海道函館市の「ホテル水色の詩(みずいろのうた)」を経営する有限会社工藤観光の代表取締役社長の工藤丈さん(46歳)に取材を試みた。  工藤さんは、北海道函館市のラブホテルの生き残り競争が激しい地区で少子化やコロナウィルス感染拡大の影響を受けながらも14年、経営を続けている。  かつては暴力団員と思しき男とのトラブルや、警察に追われる男の来店など、客への対応に困り果てていたという。その当時のエピソードや、リピーターの登場によって客層が変わりつつあるラブホテルの現状について聞いた。
水色の詩 部屋内

北海道函館市のラブホテル・水色の詩

威圧的な態度で「誠意を見せろ」と迫る

 10年程前、工藤さんは反社会的勢力の一員と思える風貌の20代前半の男性にすごまれた。  事の発端はまず、男性が女性と一緒にホテルの部屋を出て、駐車場に向かったところから始まる。料金を支払ってもらっていないために、バックオフィスで防犯カメラを見ていた工藤さんが後を追い、男性が乗る車の窓ガラスを軽く数回たたいた。 「お支払いはまだですよね?と言ったところ、男は窓を開けて1万円を出したのです。おつりを今、お持ちしますと答えたら、『つりはいらない。今、窓をたたいたな。傷がついたから、誠意を見せろよ』とすごむのです。  傷がつくようなたたき方ではないのですが、何度も謝りました。それでも、『誠意を見せろ』と繰り返す。お金を払え、ということですか?と尋ねたら、『金なんて言っていない。誠意を見せろ』の一点張り。  この調子で20分くらいすごむ。助手席に座る女性がたしなめると、『覚えていろよ』と怒鳴り、ホイルスピンをかまして帰っていきました」

ホテルでは防犯対策を強化することに

 その後、この男が店に来ることはなかったというが、工藤さんによると、反社会的勢力の一員と思える者は「金を払え!」とはめったに言わず、威圧的な態度で「誠意」といった言葉を盛んに口にするようだ。  この一件以前から、ホテル水色の詩は警察の助言もあり、防犯対策の一環としてホテルの出入り口や駐車場に数十台の防犯カメラを設置している。社員などのスタッフは、バックオフィスでその映像や車のナンバー(車番)を常時記録している。  時折、警察が来て「近くで強盗事件があり、ナンバーがわかっているから、車番の記録を見せてほしい」と言い、念入りに確認することもあるという。
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病と偽り、救急車を呼び、お金を払わずに逃げようとするお客
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ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
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