今年の都知事選や衆院選では、YouTubeやSNSを活用した扇動や情報戦が目立つなど、新聞・テレビの既存メディアは存在価値が問われる一年だった。そこで、このたび時事コラム&メディア論集 『
半信半疑のリテラシー』(扶桑社刊)を上梓する“時事芸人”のプチ鹿島氏に、「半信半疑」をキーワードに今年のニュースを総括してもらった!
プチ鹿島氏
半信半疑は下世話な野次馬精神の賜物
’24年はデマやフェイクニュースが一般層にも影響を及ぼした年だった。混沌とした情報戦を生き抜くには、一方の言い分を鵜呑みにしない「半信半疑」の姿勢が必要。そう語るのは、新聞14紙の読み比べをライフワークとする時事芸人のプチ鹿島氏だ。
「こういう活動をしていると『情報リテラシーが高いですね』と褒められることも、『オールドメディアなんか読んでいる時点でダメだ』と批判されることもありますが、私の根底にあるのは、下世話な野次馬精神なんです。ノリとしては学校や会社で『誰と誰が付き合っている』と噂が立ったとき、その情報源となる人の性格やキャラを加味した上で情報を精査したい。そこには『適当な情報をつかまされたくない』という警戒心やズルさがあります。私はニュースについても同じことをしているつもりです」
そんな鹿島氏にとって、今年を象徴するキーワードは「オールドメディア」だという。たとえば兵庫県知事選。
パワハラ疑惑を告発され失職した斎藤元彦氏だが、SNSでは「#斎藤知事がんばれ」の熱狂的ムーブメントが起きた
「テレビや新聞はさんざん斎藤元彦氏側にネガティブな報道をしていたが、NHKから国民を守る党の立花孝志党首をはじめとするSNSやネット情報はそれとは違う“真実”を喧伝しました。斎藤氏の支持者からすれば、これはオールドメディアの敗北でしょう。一方、斎藤氏の一連の疑惑を注視していた人たちからすれば、選挙期間に新聞やテレビが公職選挙法と放送法を盾にして中立・公平を唱えているときに、SNSで真偽不明の言説が自由に飛び交った。その状態に『既存メディアはこれでいいのか』と疑問に思った人も多いはずです」
いずれの立場にしてもオールドメディアの立ち位置が問われた一年だったというわけだ。そんな半信半疑の視点から、今年のニュースTOP5を挙げてもらった。
「もっとも象徴的だったのは米大統領選。多くの支持者たちが高揚してトランプ氏の掲げる“物語”を強固に信じていたが、問題はその物語がフェイクニュースやデマから影響を受けていたのではないか、という点です。日本でも、東京都知事選での“石丸現象”、衆院選でSNSを活用した国民民主党の躍進、前述の兵庫県知事選にはその端緒を見ました。彼らが反発する既得権益の中に“オールドメディア”が含まれている。また、松本人志の性加害報道でも、擁護派による『文春はデマ、捏造』という浅いマスゴミ論のムーブが気になりました。トランプ氏も不利な情報が出てくるほど『これはデマだ』とエネルギーにして煽りましたが、同じものを感じます」
1970年、長野県出身。芸人、コラムニスト。新聞14紙を読み比べ、政治、スポーツ、文化と幅広いジャンルからニュースを読み解く。著書に『ヤラセと情熱 水曜スペシャル「川口浩探検隊」の真実』(双葉社)、『芸人式 新聞の読み方』(幻冬舎)など
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