住民の体調不良が続出!新農薬「ネオニコチノイド」の影響か!?
週刊SPA!11/6発売号「新農薬[ネオニコチノイド]が脳を壊す!?」では、医師による人体への影響についての解説や海外での規制事情など、より踏み込んでリポートしている。 <取材・文/斉藤円華>
「12年ほど前に上田市内に移り住んだのですが、空中散布の時には、毎年体調が悪くなり苦しんできました」
そう話すのは、長野県上田市にある保育所「こどもの園」の田口操園長だ。上田市では過去、毎年6~7月に松枯れ防止のため農薬の空中散布を実施してきた。
「空中散布の時期になると決まって頭痛になったり、体中の皮膚に赤い斑点が出たりするんです。その時期は、山の上や市外に避難しなければなりませんでした」
そして、’08年6月末の空中散布の時期には、田口さんだけでなく保育所スタッフや園児にも異変が表れた。
「空中散布後、みんなほぼ同時に具合が悪くなりました。不整脈や鼻血、頭痛、発熱、下痢や嘔吐などの症状が見られました」
この年、例年使用されていた有機リン系農薬に加えて、「ネオニコチノイド系」(ネオニコ)の農薬が初めて併用されたのだという。
「東京女子医科大学の平久美子医師によると、有機リン系に加えてネオニコ系の農薬を吸引すると、同様の症状が現れるそうです。普段はきちんと行動していたのに、急に落ち着きがなくなってADHD(注意欠陥多動性症候群)と診断されるようになった子供もいるんです」(田口さん)
そこで、田口さんは佐久総合病院(佐久市)に調査を依頼。同病院では同年9~10月にかけて、上田市とその周辺の690人を対象に健康被害調査を実施した。その結果、空中散布を行った場所に近いほど体調不良になる率が高いことが判明したという。
上田市ではこうした事実を受け止め、’09年に農薬の空中散布を中止した。田口さんは「チョウやトンボが激減していたのですが、空中散布をやめてから、よく見かけるようになりました」と話す。
周辺の自治体では今も空中散布が行われている。長野県では「空中散布が人の健康に与える影響についての科学的知見が不十分である」と、’10年に有識者らによる連絡会議を立ち上げ、空中散布についての見直し作業を行った。
ところが、県は「(空中散布による)農薬の、人への曝露をできる限り低減しなくてはならない」としながらも「松林を守るためには、現時点で他の方法に代えられない」として、基本的には空中散布を続ける方針を変えなかった。
「上田市が中止できたのに、長野県が中止できない理由は何でしょうか。住民の健康被害を軽く考えているとしか思えません」(同)
「人体に影響はない」とされつつも、EUでは規制強化の動きも出始めているという強力な新農薬「ネオニコチノイド」。
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