想像もつかないほど最先端の顔認識技術『怪人百面相』
デジカメで顔にピントを合わせたり、監視カメラで逃亡犯の顔を見つけたり、さまざまな場所で活躍する顔認識技術。その技術をエンタメ活用するアプリを紹介
◆“顔”で遊ぶアプリはこう顔を認識する!
スマホに写る顔がみるみるうちにモナ・リザや柴犬に変わっていく……。そんなカメラアプリがある。なぜスマホで撮った顔を、自然に別の顔に変化させることができるのか? 実は、これらのアプリには、最先端の「顔認識」の技術が使われている。変装カメラアプリ、『怪人百面相』の開発者であるヤフーの吉田一星氏に聞いてみた。
「顔認識技術自体はさまざまなところで使われています。例えば、“笑顔にならないと開かない冷蔵庫”が昨年グッドデザイン賞を受賞しました。また、カリフォルニア大学サンディエゴ校で教育に応用しようと実験された例も面白い活用方法だと思います。授業の内容がわからないと学生が困った顔になるので、その表情によってビデオの再生をゆっくりにするなど、理解度に応じた教育を機械で実現すべく研究されているようです。ほかに身近なところでは、防犯やセキュリティ、自動販売機で顔から年齢、性別などを判別して、マーケティングに生かすとか、20歳未満にたばこを売らないようにするなどといった使い方が実際にされています」
そして、吉田氏が開発した『怪人百面相』では、小さなスマホからは想像もつかないほど最先端の顔認識技術が使われているという。
「『怪人百面相』で使っているのは、通常の顔認識よりもより精密に認識する“フェイストラッキング”という技術です。この技術は顔の特徴点をより多く抽出することで、リアルタイムでの表情の動きの認識を可能にしています」
単純な顔認識自体は、スマホに標準搭載されている機能であり、さまざまなアプリにも活用されているが、これは単に目や口などを大まかに検出するだけ。
「“フェイストラッキング”では、約40か所のポイントを抽出して、アプリ内の変装用のマスクと合わせて、顔が変化するような仕組みになっています(下部写真参照)。画面に写した顔の輪郭、眉、目、鼻、口を詳細に認識。内蔵されているモナ・リザや犬、お面などのマスクにも同様に認識ポイントが埋め込まれており、それが合わさることで“変装”ができます。スマホの限られたスペックの中で実現するのは非常に難しかったのですが、“機能学習”という技術を使って、数万パターンの写真を覚えさせました」
顔の向きや照明、男女など、あらゆる写真を覚えさせることで、どんな人がアプリを使っても、リアルタイムで顔を認識するようになっているのだという。「スマホの処理能力でここまで精密に動作する例がほかにないのがウリ」と吉田氏。
この『怪人百面相』の顔認識技術をきっかけに、リアルタイムで顔を認識し、加工を施せるエンタメツールの開発をもくろんでいるという。
「アバターと同期させたり、顔を変えて動画配信させたりするツールを作りたいですね。そうすれば例えば、おじさんでも美女に変身して放送ができます(笑)」
実現したら、画像も女性のネカマが登場することになるわけか……。とはいえ、現段階では本人の輪郭に基づいた変身しかできず、オッサンがやってもゴツい美女になってしまうようだ……無念!?
⇒【写真】顔の特徴の抽出 https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=446584
【怪人百面相】
iPhone用のみ。Android用は現在開発中。変装したまま動いたり表情を変えたりもできるが、変装した顔をスムーズに動かすには、iPhone4S、iPod Touch5th以降推奨。
取材・文/朝井麻由美
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