なぜ『あまちゃん』は、これほど影響力があったのか?
―[私の『あまちゃん』事件簿]―
NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』の甚大な影響力について、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』の著者である田幸和歌子氏は、こう分析する。
「同じ東北が舞台で、訛りのあるヒロイン、ストーリーの密度の濃さ。30年前に日本中で大ヒットした『おしん』と共通する部分が多く見受けられます。ただし、『おしん』を“陰”とするなら『あまちゃん』は“陽”。能年玲奈さん演じるアキの明るく前向きなキャラクターと、家族愛を描いた王道のストーリー展開、そして随所に笑いがちりばめられた細かい演出と相まって、ここまでの爆発的なブームを巻き起こした。もはや『あまちゃん』は『おしん』を超えたと言えるかもしれません」
さらに、世代を超えて共感を呼ぶ理由として田幸氏は“3世代ヒロイン”の存在に注目。
「朝ドラの視聴者層で一番多いのが、アキの母親である春子(小泉今日子)と同じ40代の女性。彼女を中心に、春子の母である夏(宮本信子)、娘のアキ(能年玲奈)と、上と下の世代の人たちも彼女たちに共感し、感情移入できる構造になっている。そして、脇を固める登場人物もキャラ立ちしているので、どんな人でもハマるキャラが必ずいるんです」
また、『あまちゃん』というタイトルにも深い意味が込められているという。
「これまでの朝ドラは、ひたむきに頑張るヒロインと、それを見守る周りの“大人”というのが基本構造でした。でも、このドラマに出てくる人たちは、大人だってみんなどこか欠陥を抱えた不完全なキャラばかり。視聴者は大人になりたくてもなりきれない、自分のなかの『あまちゃん』な部分を彼らに重ね合わせてのめり込んでいる」
SPA!がこれまでで紹介してきた『あまちゃん』ファン(https://nikkan-spa.jp/503823)も、いい年して大人になれていない人たちのエピソードばかり……日本人が総“あまちゃん”化している現代だからこそ、『あまちゃん』はここまでの影響力を持つに至ったのかも!?
【田幸和歌子氏】
長野県出身。編集&ライター。出版社・広告会社を経てフリーに。 近著に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)
取材・文/加藤カジカ 中村裕一 イラスト/青木俊直 写真/岡崎隆夫 渡辺秀之 アンケート協力/アイオイクス
― 私の『あまちゃん』事件簿【7】 ―
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