音楽ストリーミング配信大手の日本上陸が難航!?
「ストリーミング音楽配信サービス」。日本では聞き慣れないサービスだが、世界では今、CDを超える利益を出しつつある。
⇒【前回】『音楽ストリーミング配信が日本で広がらない理由』はコチラ https://nikkan-spa.jp/513538
◆日本と『スポティファイ』が抱える問題点
世界で浸透してきている今もなお、日本の音楽業界は新譜のストリーミング配信を渋っているのだろうか。「否」と音楽業界に詳しいコンサルタントの榎本幹朗氏は答える。
「日本の音楽業界も『スポティファイ』上陸を希望していますし、そのために新譜を導入する必要があることもわかっている。ただ、日本の場合は諸外国と違って問題があるのです。海外では『スポティファイ』導入によって音楽業界の売り上げが18%増え、違法ダウンロードが約6分の1に減った国もあります。『スポティファイ』の月額料金は1000円弱で、これは海外のアルバム1枚分の値段と同等。『スポティファイ』を1年間使うと、アルバム12枚分。有料会員が4分の1だから単純計算でアルバム3枚分。もともと世界のレコード産業の売り上げは、年間一人当たりアルバム1・5枚程度といわれていたので、それを超えた『スポティファイ』はCDよりも儲かる仕組みになったんです。しかし、日本は世界一CDが売れる国であると同時に、CDの単価が高い。アルバム1枚平均2200円、デジタルでも1500~2000円なので、『スポティファイ』の月額も相応にしたいところですが、それでは高すぎて有料会員が増えづらいんです。『スポティファイ』は、ちょくちょく上陸の噂は立ってきましたが、この値段設定の問題が、日本になかなか上陸できない本当の理由です」
それでは、日本に音楽のストリーミング配信サービスが定着するためにはどうすべきなのか?
「月額のシステムをそのまま日本にも当てはめるのはどう考えても難しいので、例えば日額100円にして、使った日だけ課金される、とか、月額980円で、好きなアーティストの先行配信やライブ音源を聴く場合100円ずつ追加とか、積み増す方法が考えられます。ただ、日本だけに特例を認めるわけにはいかないので、世界のユーザーが納得できるものでないと、と『スポティファイ』側も二の足を踏んでいます。実は、『スポティファイ』のアメリカ進出時も、世界的にシステムの変更がありました。アメリカにはすでにiTunesのユーザーが多かったから、『スポティファイ』上陸時に、毎月無料で使える時間を短くしてくれ、とアメリカ側が主張しました。それで結局、毎月20時間無料だったのが、世界的に10時間に短縮になりました。当然、既存のユーザーからは大ブーイング。その経緯で、『スポティファイ』は料金体系の変更には慎重。日本と『スポティファイ』の歩み寄りがまだうまくいっていない現状、日本上陸は難しいというのが事実なのです」
⇒【次回】『「黒船」を迎え撃つ、国産音楽ストリーミング配信サービス』へ続く https://nikkan-spa.jp/513540
【榎本幹朗氏】
音楽ライター、コンサルタント。ビートリップ、ぴあを経て独立。音楽業界の新規事業開発やコンサルティングを中心に活動中
取材・文/朝井麻由美
― ストリーミング音楽配信サービスは音楽業界を変えるのか?【2】 ―
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