東京五輪開催で都内有数のハッテン場が壊滅の危機
長年の誘致活動が実のり、2020年の東京オリンピック開催が決定した。8年間で3兆円という膨大な経済効果も期待され、明るい話題ばかりだ。しかし、その陰ではさまざまなものが排除される“浄化作戦”がこっそりと進行していた!
◆ゲイの“ハッテン場”がオリンピックで潰されてしまう!?
JR信濃町駅付近に、かつて「権田原」と呼ばれる国内最大級の“ハッテン場”があった。ハッテン場とは、男性同性愛者同士が出会い、セックスを楽しむ場所のこと。’60年代、明治神宮外苑に位置する権田原地域の公衆便所や公園の植え込みでは、夜な夜なゲイたちの性行動が営まれていたという。“日本のゲイ解放運動の草分け”と呼ばれる伝説的活動家・南定四郎氏(81歳)は次のように回想する。
「権田原は交通の便がよく、都心で働くゲイに利用されていました。外苑に位置しているので見通しがきき、しかも視界をさえぎる植え込みが多い。相手を探し、すぐにセックスするハッテン場として格好の立地です。“花の吉原、男の権田原”という言葉があったほどで、地方のゲイ青年は権田原に憧れて上京しました」
だが、’64年東京五輪のための道路整備や、“東京をきれいにする”という名目の浄化作戦によって権田原は追い詰められていく。権田原バス停付近の公衆便所は柵で厳重に封鎖され、暗闇を消すための街灯も整備された。「権田原」が消えた最大の原因は東京五輪だが、ゲイ・コミュニティの変化も大きいという。「権田原は基本的にセックス目的の場所ですが、ゲイ同士で雑談をしながら楽しく過ごしたい人たちが出てきました。そういう人は、新宿二丁目のバーに集まるようになっていきます」
’20年の東京五輪で、都内有数の野外ハッテン場・葛西臨海公園が壊滅するのではないかといわれている。同公園がカヌー(スラローム)の会場予定地になっているからだ。だが南氏は「そもそもハッテン場自体が不要」と言い切る。「私は、言葉によるコミュニケーションもなく性交渉を求めることがいいとは思っていません。外国にはセックスだけを目的としたハッテン場なんてありませんよ。これからのゲイは、コミュニティ活動や社会貢献に生きがいを見いだすようになってほしいと思います」
【南 定四郎氏】
雑誌『アドン』編集長、第1回レズビアン・ゲイ・パレード実行委員長を務める。現在は『ゆかいの里新聞』編集発行人。沖縄県在住
― 東京五輪の陰で進む“浄化作戦”【1】 ―
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