老朽化マンションに“問題住人”が集う理由
アベノミクス効果や五輪招致の成功で活況を呈すマンション市場。ベイエリアを中心に高層マンションが次々に建設されているが、その一方では、経年劣化の激しい“おんぼろマンション”も増加し、なかには深刻なトラブルを抱える物件も少なくない。住民の高齢化、共用部にはゴミが溢れ……“負のスパイラル”にはまり「スラム化」するマンションの惨状を追った。
◆老朽化マンションに集う、トラブルを起こす住人たち
経年劣化の進んだ物件では、スラム化以前に、その予兆ともいえる住人トラブルも頻発している。特に老朽化と住民の高齢化が激しい’70年代以前に建てられた分譲団地では、その傾向が顕著だ。23区内にあるT団地の住人が話す。
「ウチの団地には約7000人が暮らしていますが、住人の半数以上は年金生活者。認知症の老人も多く、ボヤ騒ぎがしょっちゅう起きます。火にかけた鍋を忘れてしまうようなことならまだしも、階段の踊り場で枯れ葉で焚き火をした老人がいて、消防車が来る騒ぎになった。窓から生ゴミが投げ捨てられるのも日常茶飯事です」
そういった団地物件は、違法テナントに狙われることも。
「団地の1階に飲食店が入居したのですが、実はそこは、裏で違法売春の斡旋もしていた。風俗雑誌にその情報が載ったことで発覚し、怒った住人が怒鳴りこんだので退去していきましたが……」
◆格安になった中古物件に粗悪な住人が集まる
一般的な分譲マンションでも、老朽化をきっかけに住人トラブルは増加しやすい。空室を防ごうと値下げするだけでなく、「ペット飼育可」「楽器可」などと諸条件を緩和した結果、“無法者”が紛れ込んでしまうという悪循環だ。都内にある築30年の中古マンションを7年前に購入した男性が話す。
「ウチのマンションでは最近、空室を埋めるために管理会社がシェアハウスを容認したんです。すると、どう見ても“堅気じゃない”男が出入りするようになった。建前上はシェアハウスを運営しているようなんですが、その部屋に出入りしているのは明らかにお水系の女性ばかり。ほかの住人とは『風俗の待機場になってるんじゃないか?』と話をしています。管理会社に苦情を言ったんですが、『いや、○○号室はシェアハウスのはずですよ』の一点張りです」
また、全ての外国人が問題を起こすわけではないが、外国人入居者の増加とともに、コミュニケーション不全によるトラブルも増加。「中国人住民が増えて、ゴミ捨てのルールを無視するので困っている」、「隣の東南アジア系住人の部屋の騒音が酷い。深夜なのに十何人も出入りして騒いでいる」などの声は多く聞かれた。
ほかに、文化の違いからトラブルになることも。神奈川県の築38年のマンションに住む男性が話す。
「ウチのマンションは『ペット飼育可』なので小型犬を飼っているのですが、ある日、入居してきたばかりのマレーシア人男性にウチの犬が気絶するほど蹴り飛ばされて……。向こうで犬は不浄な生き物とされているらしいけれど、それでウチの犬が殺されたらたまったもんじゃない。結局、警察を呼ぶ騒ぎになりました」
こういった住人トラブルが多発する物件の場合、「管理組合の運営やコミュニティ活動が正常に機能していないことが多い」と話すのはマンション修繕支援を行うNPO法人「匠リニューアル技術支援協会」の玉田雄次氏だ。
「特に’81年以前に建てられた旧耐震基準のマンションは、管理組合の規約が緩く、問題に対処できないことも多い。そういったマンションでは住民の高齢化も進んでいるし、そもそも理事のなり手がなかなかいない場合も多い」
管理組合が“形骸化”したマンションでは、理事長が不正に手を染めるケースすらある。都内のある中古マンションでは、「理事長が修繕工事を行う業者からバックマージンを受けていた。普通よりも速いペースで工事をくり返した結果、必要な修繕積立金がほぼゼロになってしまった」(住人)という。
そこに住む人間次第で、スラム化はまたたく間に進行するのだ。
― [マンションのスラム化]がヤバ過ぎる!【4】 ―
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